[認知症と介護に関する
意識調査]
アンケート
結果発表

日本の認知症患者は年々増えていて2025年には675万人~730万人、65歳以上の高齢者のおよそ5人に一人が認知症となることが、平成29年版高齢社会白書(*1)や内閣府、厚生労働省等で予測されています。認知症は自身がなっても、家族がなっても心配な点が多い病気です。それぞれの立場になった場合の認知症に対する意識について調査しました。

[調査概要]

調査内容
認知症に関するアンケート
実施対象
V-NET会員とアンケートモニターサイト閲覧の非会員の方
実施方法
V-NET会員への告知とアンケートモニターサイトへの掲載
実施期間
2023年12月11日(月)~2024年1月10日(水)
有効回答数
2,622票(男性:1,362名、女性:1,260名、12~90歳 / 平均年齢46.9歳)

参照に関するお願い:本アンケート結果を参照される場合、参照元を記載いただき可能であれば本URLの記載お願いたします。

アンケート結果の分析・考察

認知症とは
脳の神経細胞の働きが悪くなり、記憶や判断力などの認知機能が低下し、生活に支障をきたした状態の事をいいます。 認知症の重症度には【軽度】【中等度】【重度】があります。 本アンケートでは自分や家族、パートナー等が中等度認知症の診断を受けた場合について調査いたしました。

[重症度別の症状]

軽度感情の起伏が激しくなる、時間や場所の感覚がくるってしまう
具体例:何度も同じミスをする/運転中のミスが増える/日付や場所がわからなくなる
中等度家族の補助や介護サービスの利用など、他の人のサポートが必要になることが増加する
具体例:1時間前のことが覚えていられない/料理がうまくできない/服がうまく着れない/掃除洗濯がうまくできない/道に迷う
重度認知機能が著しく低下するとともに、意欲や自発性も乏しくなっていきます
具体例:無表情/コミュニケーションが取れない/失禁や筋固縮

あなたが中等度認知症の診断を受けた場合、介護してくれる人はいますか

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介護してもらう側になった場合について考えた事はありますか

認知症は加齢と共に発症率が高くなるため、若年層の方にとっては非現実的な質問だったかもしれません。
介護者が「いる」と回答した方は37%、「いない」と回答した方は36%、「わからない」と回答した方は27%でした。世代別でみると、20代未満では「分からない」の回答が最も多く41%、認知症について現実的に考えづらいことが伺えます。また、40代や50代では介護者が「いない」と答えた回答が40%でした。40代や50代は子供は自立していない、親は介護が必要という方が多い層であることが予想されます。こういった背景から自分が介護される側になった時に「介護者はいない」と答える方が多かったのかもしれません。

あなたが中等度認知症の診断を受けた場合、最も不安に感じる事を選択してください

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身近だからこそ迷惑をかけたくないと思う方が多い傾向に

最も不安に感じていることで回答が多かったのは「家族に迷惑をかける事」で49%でした。
次に「自分自身が分からなくなること」20%、「生活していけるかどうか」13%という結果でした。 自分自身の事では無く、家族への負担について不安に思う方が多いようです。 中等度の認知症になると自分1人で日常的な動作が難しくなってくるので介護や介助が必要になってきます。 そういった時に頼れるのが一番に家族ですが、身近だからこそ迷惑をかけたくないと思う方が多いようです。

「他」を選択した方の回答

周囲からみた自身への評価や視線(36歳女性)/終活ができるかどうか(38歳男性)
認知症中等度の症状に至るまでに資産整理ができるかどうか(53歳男性)/大切な人を忘れること(33歳女性)

配偶者またはパートナーが中等度認知症と診断された場合、どのような生活スタイルを希望しますか

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同居を希望する方が多い傾向

配偶者やパートナーが中等度認知症になった場合、「同居」を希望する方は51%でした。 次に「別居」が35%、「自宅と施設を併用」が29%「専門施設に預ける」が18%でした。 身近な人だからこそ、病気になっても一緒に居たいと思う方が多い一方で、別居したいと思う方も多くいらっしゃいました。 平成22年(2010年)国民生活基礎調査(*2)によると認知症患者と同居している方が64.1%で最も多く 「同居」の主な介護者の続柄は「配偶者」が25.7%で最も多い結果になっています。 認知症の方と同居するということは、同居する家族が介護や介助をするということは必然です。 そういった負担が一番に配偶者にかかることを考えると別居をしたいと思う方が多いのかもしれません。
*2:平成22年国民生活基礎調査

「他」を選択した方の回答

自宅で助けてもらいながら介護する(60歳女性)/具体的な想定はできていません(46歳女性)
世帯分離して市に預ける、自分の人生を犠牲にしてまで尽くそうと思えない(25歳女性)

配偶者またはパートナーの両親が中等度認知症と診断された場合、どのような生活スタイルを希望しますか

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同居を希望しない女性が多い傾向に

配偶者やパートナーの両親が中等度認知症と診断された場合の希望生活スタイルは、 「専門施設に預ける」が40%、「自宅と施設を併用」が37%、「同居」が15%の順番に回答が多い結果となりました。 男女別でみると女性は「専門施設に預ける」が46%で回答割合が多いのに対し、男性は「自宅と施設を併用」37%の回答が多い結果となりました。 また同居を希望する男性が22%に対し、女性は8%という結果でした。 女性が家事や育児など家のことをするという社会的風潮は現在もあります。 そういった背景から、同居を希望しない女性は多いのかもしれません。

自分の両親が中等度認知症と診断された場合、どのような生活スタイルを希望しますか

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義両親同様に専門施設に預けるが多い傾向に

自分の両親が中等度認知症と診断された場合の希望生活スタイルは、 「専門施設に預ける」が42%、「自宅と施設を併用」が38%、「同居」が13%という結果になりました。 配偶者やパートナーの両親が中等度認知症と診断された場合と同じような結果になりました。 また、男女別で見た場合も「専門施設に預ける」「自宅と施設の併用」「同居」の順番でした。 実の両親、義両親に関わらず、自身の生活スタイルを維持するためにも専門施設に預けたいと思う方が多いのかもしれません。

以下家族が中等度認知症と診断された場合あなたは介護をしますか?あなたが介護をする家族を選択してください(複数回答可)

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「家族であれば誰であっても介護する」が最も多い結果に

「家族であれば誰であっても介護する」が551名、「配偶者(パートナー)」が542名、「自分の両親」が374名、「誰であっても介護しない」が355名の順となりました。 核家族が多く家族とのつながりが希薄といわれる現代で、家族を介護するという選択は難しいのではないかと思いましたが「家族であれば誰であっても介護する」を選択する方が最も多い結果となりました。
一方で「配偶者であれば…」、「実の両親であれば…」と介護する方を限定していることも多く、「介護はしない」という回答は4番目に回答割合が多い結果でした。 中等度認知症になると、自分の身の回りのことが出来なくなったり、道に迷ったり等認知症患者を1人にしておくことが心配な状態が続きます。 目が離せない一方で、今までできていたことが徐々に出来なくなっていく家族の姿を身近でみていくのはとても辛いことです。 さまざまな背景から「介護はしない」を選択されたのかもしれません。

認知症に備えて必要な事とは

認知症はある日突然、中等度認知症になる訳ではありません。進行のスピードには個人差がありますが、徐々に進行していく病気です。
今まで出来ていたことが出来なくなるということは本人にとっても、家族にとっても精神的負担が大きな病気だといえます。
冒頭でも述べたように2025年には65歳以上の高齢者のおよそ5人に一人が認知症となることが予測されています。
高齢化社会の日本で認知症患者は急速に増えていく可能性があります。
認知症患者やその家族が身体的、精神的な負担を減らすためにも認知症患者の意向、家族の意向を事前に話合うことは重要に感じます。

アルツハイマーイメージ