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【腰痛の種類 全解説】あなたの痛みはどのタイプ?原因・症状・危険なサインを徹底ガイド

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ボラ君:「ヨシキさん、こんにちは!...イタタッ。また腰がズキズキ痛むんですよ。この前は『ぎっくり腰かな?』と思ったんですけど、今回はジーンとしびれるような感じで...。これってヘルニアとか、何か悪い病気なんですかね?」

ヨシキさん:「ボラ君、こんにちは。心配になるよね。実は『腰痛』と一言で言っても、その痛み方や原因によって、全く種類が違うんだ。ボラ君のように『この痛みは何だろう?』と自分の症状の種類を知りたがるのは、改善への正しい第一歩だよ。」

ボラ君:「種類、ですか。ぎっくり腰とか、ヘルニアとか、坐骨神経痛とか...言葉は聞きますけど、正直ごちゃごちゃで。自分の痛みがどれなのか、さっぱりわからないです。」

ヨシキさん:「そうだよね。ほとんどの人がそうだと思う。でも、自分の痛みの種類を知らないまま自己流でマッサージしたり、無理にストレッチしたりすると、かえって悪化させてしまう危険もあるんだ。僕も40代前半で体の不調に悩んでいた頃は、その区別がつかずに色々試しては失敗していたよ。」

ボラ君:「うわ、怖いですね...。じゃあ、どうすればいいんですか?病院に行くべきなのか、それとも家でできることがあるのか...。」

ヨシキさん:「その判断をするためにも、まずは『腰痛の全体像』を知ることが大切なんだ。今日は、腰痛の世界の大きな地図を広げて、君の痛みがどのあたりに位置するのか、どんな特徴があるのかを一緒に見ていこう。危険な腰痛のサインから、種類別の正しい対処法まで、網羅的に解説していくよ。」

ボラ君:「まさに腰痛の教科書ですね!ぜひお願いします!これでもう『この痛み、何だろう?』って不安になるのは終わりにしたいです!」

ヨシキさん:「その意気だ!この記事を読み終える頃には、君も『腰痛博士』になれるはずだよ。さあ、自分の体と向き合うための知識を身につけていこう!」


【大前提】全ての腰痛は2つのグループに分けられる

まず、どんな複雑に見える腰痛も、非常にシンプルな分類からスタートします。それは、痛みの原因がレントゲンやMRIといった画像検査で「はっきりと特定できるか、できないか」という分け方です。この大原則を知るだけで、あなたの腰痛への理解度は劇的に深まり、いたずらに不安がる必要がなくなります。全ての腰痛は、このどちらかのグループに属しているのです。

① 特異的腰痛(全体の約15%):原因がはっきりしている腰痛

こちらのグループは、いわば「犯人がわかっている腰痛」です。お医者さんがレントゲンやMRIの画像を見て、「ああ、背骨のこの部分のクッション(椎間板)が飛び出して神経に当たっていますね。これが痛みの原因です」というように、痛みを引き起こしている物理的な原因を特定できるケースを指します。

この「特異的腰痛」は、腰痛全体の約15%と、実は少数派です。しかし、中には早急な治療が必要なものも含まれるため、見過ごすことはできません。代表的なものには、後ほど詳しく解説する「椎間板ヘルニア」や「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」、「圧迫骨折」などがあります。これらは、骨や椎間板、神経といった構造そのものに問題が起きているため、基本的なアプローチは医療機関での専門的な診断と治療になります。自己判断で無理な運動やマッサージをすると、神経の圧迫を強めてしまうなど、症状を悪化させるリスクがあるため特に注意が必要です。

さらに、このグループには非常に稀ですが、がんの骨への転移や、背骨の細菌感染(化膿性脊椎炎など)、内臓の病気(すい炎、腎結石、大動脈解離など)が原因で腰痛が引き起こされるケースも含まれます。これらは命に関わることもあるため、後述する「危険なサイン(レッドフラッグ)」を見逃さないことが何よりも重要になります。このように「特異的腰痛」は少数派ながら、その中身は多岐にわたり、正しい診断が治療の第一歩となるグループなのです。

② 非特異的腰痛(全体の約85%):原因が特定しにくい腰痛

さて、こちらが腰痛界の大多数、実に全体の約85%を占めるメジャーなグループです。あなたや、あなたの周りの人が悩んでいる腰痛も、この「非特異的腰痛」である可能性が非常に高いと言えます。これは、いわば「犯人が特定できない腰痛」です。

病院でレントゲンやMRIを撮っても、「骨には特に異常ありませんね」「ヘルニアや狭窄症は見当たりません」と言われるケースがこれにあたります。いわゆる「腰痛症」や「ぎっくり腰」と呼ばれるものの多くが、このグループに含まれます。では、骨に異常がないのになぜ痛むのでしょうか?その原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 筋肉・筋膜の問題:長時間のデスクワークや立ち仕事、運動不足などによって、腰回りの筋肉が過度に緊張し、硬くなってしまう状態です。筋肉が硬くなると、その中を通る血管が圧迫されて血行が悪くなり、痛み物質が溜まりやすくなります。筋肉を包んでいる「筋膜」という膜がよじれたり、滑りが悪くなったりすることも痛みの原因となります。
  • 椎間関節の問題:背骨は、椎骨という小さな骨が積み重なってできており、その連結部分を「椎間関節」と呼びます。この関節に急な負荷がかかったり、微妙なズレが生じたりすることで、関節周辺で炎症が起こり、痛みを感じることがあります。
  • 生活習慣の問題:猫背などの悪い姿勢、運動不足による筋力低下、肥満による腰への過剰な負担、合わない寝具の使用など、日々の生活習慣が腰にダメージを蓄積させ、痛みを引き起こします。
  • 心理・社会的なストレス:「痛みは体だけの問題」と思われがちですが、実は心の問題も大きく関わっています。仕事や家庭でのストレス、不安、うつ状態などが続くと、脳の痛みを感じるシステムが過敏になり、通常なら感じないようなわずかな刺激でも「痛み」として認識してしまうことがあります。痛みが長引く「慢性腰痛」の背景には、この要因が隠れているケースが少なくありません。

このように、「非特異的腰痛」は原因が一つではないため、治療法も「これをすれば治る」という特効薬はありません。しかし、裏を返せば、骨などの構造には大きな問題がないため、自分の生活習慣や体の使い方を見直し、適切なセルフケアを行うことで、改善できる可能性が非常に高い腰痛グループであると言えるのです。

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【種類別・症状全解説】代表的な腰痛の原因と見分け方

さて、腰痛の2大グループがわかったところで、ここからは皆さんがよく耳にする具体的な腰痛の種類を、ファイル形式で一つひとつ詳しく解説していきます。ご自身の症状がどのファイルに近いか、じっくりと照らし合わせながら読み進めてみてください。

File.1:急性腰痛症(ぎっくり腰)

  • 分類:非特異的腰痛
  • 主な原因:重い物を持ち上げようとした瞬間、急に体をひねった時、くしゃみをした時など、日常の何気ない動作がきっかけで、腰の筋肉や筋膜、靭帯、椎間関節といった組織が急に損傷(いわば捻挫のような状態)して起こります。筋肉や組織が悲鳴を上げている状態とイメージしてください。
  • 症状の特徴:「グキッ!」「ズキッ!」という衝撃的な感覚とともに、その場にうずくまってしまうほどの激痛が走ります。海外では「魔女の一撃」と呼ばれるほど、突発的で強烈な痛みが特徴です。体を動かそうとすると激痛が走り、寝返りや起き上がり、歩行も困難になります。痛みが出た直後は、患部が熱を持っているような「熱感」を伴うこともあります。
  • 見分けるポイント:「何をした時に痛くなったか」という、明確なきっかけがあることがほとんどです。痛みは非常に強いですが、お尻や足へのしびれは伴わないことが多いです(伴う場合はヘルニアなども疑います)。また、どんな姿勢でも痛いわけではなく、少し膝を曲げて横になるなど、自分が一番楽だと感じる「安楽な姿勢」が見つかることが多いのも特徴です。

File.2:慢性腰痛症

  • 分類:非特異的腰痛
  • 主な原因:急性腰痛とは対照的に、はっきりとしたきっかけがないのが特徴です。長時間のデスクワークや運転による悪い姿勢、運動不足による体幹筋力の低下、筋肉の柔軟性の欠如、さらには仕事上のプレッシャーや人間関係といった心理的ストレスまで、様々な要因がじわじわと腰にダメージを蓄積させた結果として発症します。血行不良による筋肉の酸欠状態や、脳の痛み認識システムの誤作動なども関わっていると考えられています。
  • 症状の特徴:「重い」「だるい」「鈍い」「張っている」といった、すっきりしない痛みが3ヶ月以上にわたって続きます。激痛ではないけれど、常に腰の存在を意識してしまうような不快な痛みです。朝起きた時に腰が固まっていて動き出すのが辛い、夕方になると疲れと共に痛みが強くなる、じっと座っていると痛くなるなど、時間帯や状況によって痛みの強さが変化する傾向があります。
  • 見分けるポイント:明確な原因やきっかけが思い当たらず、痛みが良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、慢性的に続いている状態です。マッサージをするとその場は楽になるけれど、すぐに元に戻ってしまうことが多いです。天候や気分によって痛みが左右されると感じる人もいます。足のしびれは基本的には伴いません。

File.3:腰椎椎間板ヘルニア

  • 分類:特異的腰痛
  • 主な原因:背骨の骨と骨の間でクッションの役割をしている「椎間板」という軟骨組織があります。これをあんパンに例えると、中のあんこ(髄核)が、強い圧力や加齢による劣化で、パン(線維輪)を突き破って外に飛び出してしまう状態がヘルニアです。この飛び出したあんこが、すぐそばを通っている神経を圧迫することで、激しい痛みやしびれを引き起こします。
  • 症状の特徴:腰痛に加えて、お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、場合によっては足の指先まで、片側の足に沿って放散するような「鋭い痛み」や「電気の走るようなしびれ」が典型的な症状です。これが「坐骨神経痛」と呼ばれる症状の代表例です。
  • 見分けるポイント:椅子に座る、靴下を履くためにおじぎをするなど、「前かがみ」の姿勢になると、飛び出したヘルニアがさらに神経を圧迫するため、痛みやしびれが強くなる傾向があります。逆に、背筋を伸ばしたり、立って歩いたりすると少し楽に感じることがあります。また、咳やくしゃみ、トイレでいきむなど、お腹に力が入ると(腹圧が上がると)、神経への圧迫が強まり、足に痛みが響くのも特徴的なサインです。

File.4:腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)

  • 分類:特異的腰痛
  • 主な原因:主に加齢が原因で、背骨の中にある神経の通り道である「脊柱管」が狭くなってしまう病気です。長年使ってきた背骨の骨が変形してトゲ(骨棘)ができたり、背骨を支える靭帯が分厚くなったりして、神経の通り道を圧迫します。古い水道管の内側が錆びて狭くなり、水の通りが悪くなるようなイメージです。
  • 症状の特徴:この病気の最も特徴的な症状が「間欠跛行(かんけつはこう)」です。立っていたり、しばらく歩いていたりすると、だんだんとお尻や足に痛みやしびれ、だるさが出てきて歩くのが辛くなります。しかし、少しの間、腰をかがめて休んだり、椅子に座ったりすると、症状がすっと和らぎ、また歩けるようになります。これを繰り返すのが典型的なパターンです。
  • 見分けるポイント:体を「後ろに反らす」と脊柱管がさらに狭くなるため、痛みやしびれが強くなります。逆に、体を「前かがみ」にすると脊柱管が広がるため、症状が楽になります。そのため、スーパーでショッピングカートを押している時や、自転車に乗っている時は、自然と前かがみの姿勢になるため、長時間でも平気なことが多いです。50代以降の方で、このような症状に心当たりがあれば、この病気を疑います。

File.5:腰椎すべり症・分離症

  • 分類:特異的腰痛
  • 主な原因:「分離症」は、成長期にジャンプや腰の回旋を繰り返すスポーツ(野球、バレーボール、サッカーなど)を行うことで、腰椎の一部に疲労骨折が起きて分離してしまう状態です。この分離症がベースにあったり、加齢によって椎間関節が緩んだりすることで、腰椎が前方にずれてしまうのが「すべり症」です。
  • 症状の特徴:普段は無症状のこともありますが、長時間立っていたり、歩いたり、腰を反らしたりすると、腰の中心部に鈍い痛みやだるさを感じます。すべりの程度が大きくなると、脊柱管が狭められて、脊柱管狭窄症と同じような足の痛みやしびれ(坐骨神経痛)が出現することもあります。
  • 見分けるポイント:若い頃に激しいスポーツをしていた経験があるかどうかが一つのヒントになります。腰を反らす動作や、長時間同じ姿勢で立ち続けることで痛みが増す場合に疑われます。最終的な診断はレントゲン撮影によって確定します。腰を触ると、特定の部分だけがポコッとへこんでいるように感じられることもあります。

【緊急度チェック】その腰痛、本当に大丈夫?見逃してはいけない危険なサイン

ここまで様々な腰痛の種類を解説してきましたが、ほとんどの腰痛は命に関わるものではなく、慌てて救急車を呼ぶような事態にはなりません。しかし、ごく稀に、腰痛が「がんの転移」や「感染症」、「内臓の重篤な病気」といった、緊急の対応を要する病気のサイン(レッドフラッグ)である場合があります。医療の現場では、まずこのレッドフラッグがないかを確認することから始めます。以下の項目は、あなたの体が発する最大限の警告です。もし一つでも当てはまる場合は、自己判断で様子を見たり、整体やマッサージに行ったりせず、ただちに専門医(まずは整形外科)を受診してください。

レッドフラッグ・チェックリスト

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  • 時間に関係なく痛む(夜間痛・安静時痛)
    通常の筋肉性の腰痛は、楽な姿勢をとったり、安静にしたりすると痛みが和らぐことが多いです。しかし、横になっても、どんな姿勢をとっても痛みが全く軽くならない、むしろ夜中に痛みで目が覚めてしまう、といった場合は注意が必要です。これは、筋肉や骨の動きとは関係のない、体の内部での異常(例えば腫瘍や感染など)が原因で痛みが出ている可能性を示唆します。
  • 進行性の麻痺や感覚障害
    「足のしびれ」はヘルニアなどでも見られますが、その症状が「日に日に悪化していく」「しびれの範囲がどんどん広がっていく」「足に力が入らなくなり、スリッパが脱げる、階段で足が上がらない」といった場合は、神経へのダメージが急速に進行しているサインです。放置すると、麻痺が後遺症として残ってしまう危険性があります。
  • 排泄の異常(膀胱直腸障害)
    これは最も緊急性の高いサインの一つです。「尿意があるのに出にくい」「自分の意思とは関係なく尿や便がもれてしまう」「お尻の周り(サドルの当たる部分)の感覚が麻痺して、触ってもよくわからない」といった症状は、排泄をコントロールする神経の束(馬尾神経)が、ひどく圧迫されていることを示します。早急に圧迫を取り除く処置をしないと、永続的な排尿・排便障害につながる可能性があります。
  • 説明のつかない全身症状
    腰痛に加えて、「原因不明の発熱が続く」「食欲がなく、ここ数ヶ月で急に体重が数キロ以上減った」「何をしても体がひどくだるい」といった全身の不調を伴う場合、体のどこかで炎症や悪性腫瘍などが起きている可能性を考えなければなりません。腰痛は、その病気の一症状として現れているにすぎないのです。
  • 特定の病歴
    過去に「がん(悪性腫瘍)」と診断され、治療を受けたことがある方が、新たな腰痛を発症した場合は特に注意が必要です。腰の骨は、他のがんが転移しやすい場所の一つだからです。また、糖尿病やステロイド薬の長期使用者、透析患者さんなども、細菌感染に対する抵抗力が弱っているため、感染性の腰痛(化膿性脊椎炎)を起こすリスクが比較的高くなります。

これらのサインは、腰痛全体の1%にも満たない非常に稀なケースですが、万が一ということがあります。ご自身の、あるいはご家族の症状に少しでも思い当たる節があれば、ためらわずに医療機関の扉を叩いてください。


あなたの腰痛タイプに合った「次の一手」とは?

さて、これまでの解説で、ご自身の腰痛がどのタイプに近いか、ある程度の見当がついたのではないでしょうか。ここでは、そのタイプ別に、あなたが次にとるべき具体的な行動を整理してご紹介します。正しい「次の一手」を知ることが、腰痛改善への最短ルートです。

「非特異的腰痛(ぎっくり腰、慢性腰痛)」の可能性が高いあなたへ

全体の85%を占めるこのタイプの腰痛は、セルフケアと生活習慣の見直しが改善の鍵を握ります。ただし、痛みの強さによって対処法が異なるので注意が必要です。

【急性期(痛みが非常に強い数日間)】

ぎっくり腰を発症した直後などがこれにあたります。

  • 原則は「安静」:無理に動いたり、ストレッチしたり、お風呂で温めたりするのは逆効果。炎症を悪化させてしまいます。まずは横向きに寝て膝を曲げるなど、一番楽な姿勢を見つけて安静にしましょう。
  • 「冷やす」か「温める」か:患部に熱感がある場合は、炎症を抑えるために氷のうなどで15分ほど冷やすのが有効です(RICE処置)。ただし、冷やしすぎは血行を悪くするので注意。熱感がなければ、無理に冷やす必要はありません。
  • コルセットの活用:動く際の痛みが強い場合は、市販のコルセットで腰を安定させるのも良い方法です。ただし、長期間つけっぱなしにすると腹筋や背筋が弱ってしまうため、痛みが強い時期だけの使用に留めましょう。
  • 痛みが少し和らいだら:動ける範囲で、少しずつ日常生活に戻ることが大切です。安静にしすぎると、かえって回復が遅れることがわかっています。

【慢性期(痛みが長引く、または繰り返す場合)】

慢性的な腰の重だるさや、繰り返すぎっくり腰に悩む方はこちらです。

  • 積極的に「温める」:お風呂にゆっくり浸かったり、カイロを当てたりして、腰回りの血行を良くしましょう。筋肉の緊張が和らぎ、痛みが楽になります。
  • 適度な運動とストレッチ:痛みのない範囲で、ウォーキングや水泳などの有酸素運動を取り入れましょう。また、お尻や太もも、股関節周りのストレッチで、筋肉の柔軟性を高めることも非常に重要です。前回の記事でご紹介したような、体幹トレーニングも効果的です。
  • 生活習慣の根本改善:長時間同じ姿勢をとらない(30分に一度は立ち上がる)、正しい姿勢を意識する、自分に合った寝具を見直すなど、腰に負担をかける日常のクセを一つひとつ見直していくことが、根本的な改善につながります。

「特異的腰痛(ヘルニア、狭窄症など)」の疑いがあるあなたへ

足のしびれや間欠跛行など、レッドフラッグ以外の特異的な症状に心当たりがある場合は、自己判断で対処するのは危険です。以下のステップを踏みましょう。

  • ステップ1:まずは整形外科を受診する
    何よりも先に、専門医のいる整形外科を受診してください。ここでは、問診や身体診察に加え、レントゲンやMRIといった画像検査を行い、痛みの原因を正確に突き止めます。「自分の痛みは〇〇かもしれない」という自己診断は、あくまで仮説にすぎません。確定診断を下すのが最初のステップです。
  • ステップ2:医師と治療方針を相談する
    診断が確定したら、その病状やあなたのライフスタイルに合わせて、医師と治療方針を相談します。治療法は一つではありません。
    保存療法:手術以外の治療法です。痛みや炎症を抑える薬(飲み薬、湿布)、神経の興奮を鎮める薬、血行を良くする薬などを使う「薬物療法」。硬くなった筋肉をほぐしたり、正しい体の使い方を学んだりする「リハビリテーション(理学療法)」。痛みの原因となっている神経の近くに直接麻酔薬を注射する「神経ブロック注射」などがあります。多くの場合は、まずこれらの保存療法から開始します。
  • ステップ3:手術療法を検討する
    保存療法を数ヶ月続けても効果が見られない場合や、麻痺が進行する場合、日常生活に大きな支障が出ている場合には、手術が選択肢として検討されます。最近では、体への負担が少ない内視鏡を使った手術なども増えています。医師から手術のメリット・デメリットについて十分な説明を受け、納得した上で決めることが大切です。

このように、自分の腰痛がどのグループ、どの種類に属するかで、とるべき「次の一手」は大きく変わります。まずは自分の現在地を正しく知ることが、ゴールへの最短距離となるのです。


まとめ:腰痛の種類を知ることは、的確な治療への最短ルート

今回は、「腰痛の種類」という壮大なテーマについて、網羅的に解説してきました。

最後に、この記事の最も重要なポイントを振り返りましょう。

  1. 腰痛はまず2種類に分ける:原因が特定できる「特異的腰痛(15%)」と、特定しにくい「非特異的腰痛(85%)」がある。ほとんどの腰痛は後者であり、生活習慣の見直しで改善できる可能性が高い。
  2. 自分の症状を客観視する:「いつから痛いか」「どんな時に痛むか」「足にしびれはあるか」など、自分の症状を詳しく観察することで、ヘルニアや狭窄症といった特異的腰痛の可能性を推測できる。
  3. 危険なサイン(レッドフラッグ)を見逃さない:安静時痛、進行する麻痺、排泄の異常などが見られる場合は、重篤な病気の可能性があるため、ただちに整形外科を受診する必要がある。
  4. 種類に合った正しい対処をする:自分の腰痛の種類を理解することで、「安静にする」「温める」「専門医に相談する」など、今とるべき最適な行動が明確になる。

40代前半の頃の私のように、漠然とした腰の不調に悩んでいる方は多いと思います。しかし、その痛みの「種類」を正しく知るだけで、闇雲な不安は「具体的な対策」へと変わります。自分の痛みがどのタイプなのかを知ることは、暗闇の中をやみくもに進むのではなく、地図とコンパスを持って目的地へ向かうようなものです。

この記事が、あなたのつらい腰痛の原因を理解し、的確な治療やセルフケアへと進むための、信頼できるガイドブックとなれば幸いです。


私自身、現在は医療の進歩に貢献する「治験」の会社を運営しています。この仕事を通して、既存の治療法では満足な結果が得られず、新しい選択肢を求めている方が大勢いらっしゃることを日々実感しています。

今回ご紹介したセルフケアや病院での治療は、腰痛に対する基本的なアプローチです。しかし、中には「長年治療を続けているが、痛みが改善しない」「もっと新しい治療法はないだろうか」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。慢性的な痛みと向き合う中で、現在の治療法に行き詰まりを感じている方も少なくないでしょう。そんなあなたに、新しい選択肢の一つとして、「治験」という可能性をご紹介します。

治験とは、新しいお薬や治療法が国に認められるために、その効果や安全性を確認する臨床試験のことです。専門の医師や医療スタッフのサポートのもと、開発中の新しい治療をいち早く受けられる可能性があります。もちろん、参加には様々な条件がありますが、あなたのそのつらい腰痛が、未来の医療を進歩させる一助となるかもしれません。

もし、あなたがご自身の腰痛治療において、新たな可能性を探しているのであれば、一度、どのような治験があるのか情報を集めてみてはいかがでしょうか。以下のサイトでは、現在募集されている腰痛に関する治験の情報を探すことができます。

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