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アトピー性皮膚炎の原因について

アトピー性皮膚炎の原因についてはまだ完全に解明されていませんが、近年急激に研究が進んでいます。
現在わかっている原因の一部に【乾燥肌(ドライスキン)】【免疫システムの異常】【かゆみ】があげられます。
遺伝的にアレルギーを持つ体質があったり、皮膚のバリアをする機能が低下してしまったりと複数の状況が合わさってこのような原因を引き起こし、アトピー性皮膚炎を発症したり悪化したりすると考えられています。

乾燥肌(ドライスキン)

「乾燥肌(ドライスキン)」と呼ばれるカサカサした乾燥状態の肌がアトピー性皮膚炎の原因のひとつと考えられています。
人の皮膚は表皮、真皮、皮下組織の3つの層に分かれています。表皮では皮膚の外に向かって新しい皮膚の細胞が作られていき、最終的には最も表面の部分が角層となり、はがれて垢やフケになります。
正常な皮膚の場合は、角層部分が皮膚の水分保持やバリアをしてくれています。しかし、冬場の空気の乾燥や、衣服での肌への刺激、石鹸で洗いすぎてしまうことなどが原因で、バリアが弱まり肌の水分量が減ってカサカサとした乾燥肌の状態になります。

乾燥肌を防ぐため、特に大切な表皮の成分が「フィラグリン」と呼ばれるたんぱく質成分です。
フィラグリンには皮膚の水分蒸発を防いだりバリアを強くする効果があるのですが、フィラグリンが不足すると、角層がはがれやすくなって肌の乾燥が進む原因となります。

また、2006年にイギリスの研究グループがアトピーの原因としてフィラグリンの遺伝子異常を発見し話題になりました。
フィラグリン遺伝子に異常があると、アトピーだけでなく喘息になるリスクも上がり、食物アレルギーや花粉症などを合併する危険性もあがります。
このようにフィラグリン遺伝子変異はアレルギーの原因となることが報告されています。

免疫システムの異常

アトピー性皮膚炎の皮膚が炎症する症状には、体内のたんぱく質である「Th2サイトカイン」が悪化に関係しています。
Th2サイトカインが体内で増え、皮膚に集まると、免疫システムの異常を引き起こします。その結果、皮膚のアレルギー反応や乾燥肌(ドライスキン)の症状が進行することがあります。

Th2サイトカインが肌に存在すると、皮膚の水分蒸発を防いだりバリアを強くする効果がある「フィラグリン」という物質の生産が低下します。さらに、アレルギーの原因となる白血球「好酸球」を皮膚に呼び寄せる作用があります。Th2サイトカインによる皮膚の炎症は悪循環となり悪化していきます。
また、Th2サイトカインはアトピー性皮膚炎だけでなく、喘息や鼻炎などのアレルギー疾患全般に関わっています。Th2サイトカインが増えてしまうことが、様々なアレルギー疾患を引き起こす原因のひとつとなることがあります。

アトピー性皮膚炎の患者は、このように免疫システムに異常が起きていると考えられています。しかし、なぜ免疫系に異常が起こるのかについては、現在の研究では完全に解明されておらず、不明な部分も多い状況です。

かゆみを引き起こすしくみ

皮膚のかゆみの原因のひとつとして、体内の神経回路の仕組みが挙げられます。

代表的なかゆみ成分としては、「ヒスタミン」が知られています。
ヒスタミンは蕁麻疹の原因としても有名で、皮膚に存在する肥満細胞から放出されます。
ヒスタミンとヒスタミン受容体が抹消神経に現れ、結合することで末梢神経の中で「TRPV1」というたんぱく質が活性化しカルシウムが細胞の中に入ることで末梢神経は興奮し「かゆみ」として脳に伝達します。

そのほか、「Th2サイトカイン」というたんぱく質も、かゆみを誘導する成分として知られています。また、43度以上の熱刺激はTRPV1を直接活性化させ、かゆみを脳に伝達することが分かっています。

かゆみを伝える神経回路と痛みを伝える神経回路は、相互に影響し合っています。
「痛み」を伝える神経回路はかゆみを伝える神経回路を抑制します。
そのため痛みが出るほど皮膚を掻けばかゆみを抑えることができますが、痛みが出るほどかき続けると皮膚のバリアが壊れるという悪循環が起こります。
かゆみはアトピー悪化の大きな原因であるだけではなく、アトピー性皮膚炎そのものの原因ではないかと考えられています。

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