日本皮膚学会では「①掻痒(かゆみ) ②特徴的皮疹と分布 ③慢性・反復性経過 3つの基本項目を満たすものを、症状の軽重問わずアトピー性皮膚炎と診断する」と診断基準を定めています。
皮膚科医は、この診断基準に沿って症状を確認し、アトピー性皮膚炎の診断・治療をしています。
疑わしいけれど診断が付かない場合は、急性または慢性の湿疹とし、年齢や経過を参考に診断します。
また、除外すべき疾患としてあげられた疾患を十分に鑑別でき、重要な合併症としてあげられた疾患について理解していることが大切としています。
アトピー性皮膚炎の定義・診断基準
アトピー性皮膚炎の定義(概念)
アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ。
アトピー素因:①家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)、または② IgE 抗体を産生し易い素因。
アトピー性皮膚炎の診断基準
- 瘙痒:特徴的皮疹と分布
- ①皮疹は湿疹病変
【急性病変】紅斑、湿潤性紅斑、丘疹、漿液性丘疹、鱗屑、痂皮
【慢性病変】浸潤性紅斑・苔癬化病変、痒疹、鱗屑、痂皮
②分布
・左右対側性
【好発部位】前額、眼囲、口囲・口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体幹
・参考となる年齢による特徴
【乳児期】頭、顔にはじまりしばしば体幹、四肢に下降
【幼小児期】頸部、四肢関節部の病変
【思春期・成人期】上半身(頭、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向
- 慢性・反復性経過
(しばしば新旧の皮疹が混在する) - 乳児では2ヶ月以上、その他では6ヶ月以上を慢性とする。
上記1、2および3の項目を満たすものを、症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断する。そのほかは急性あるいは慢性の湿疹とし、年齢や経過を参考にして診断する。
除外すべき診断(合併することはある)
- 接触皮膚炎・手湿疹(アトピー性皮膚炎以外の手湿疹を除外するため)
- 脂漏性皮膚炎・皮膚リンパ腫
- 単純性痒疹・乾癬
- 疥癬・免疫不全による疾患
- 汗疹・膠原病(SLE、皮膚筋炎)
- 魚鱗癬・ネザートン症候群
- 皮脂欠乏性湿疹
診断の参考項目
- 家族歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎)
- 合併症(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎)
- 毛孔一致性の丘疹による鳥肌様皮膚
- 血清 IgE 値の上昇
臨床型(幼小児期以降)
- 四肢屈側型・痒疹型
- 四肢伸側型・全身型
- 小児乾燥型・これらが混在する症例も多い
- 頭・頸・上胸・背型
重要な合併症
- 眼症状(白内障、網膜剝離など):・伝染性軟属腫とくに顔面の重症例・伝染性膿痂疹
- カポジ水痘様発疹症