インフルエンザの原因

インフルエンザは例年1~3月に感染者の数が増加します。
そこでこの記事では、なぜインフルエンザになるのかについて、原因や感染経路を解説します。インフルエンザは感染しやすい病気ですが、正しい知識と適切な対策を講じれば十分な感染予防ができます。

インフルエンザの原因

インフルエンザはインフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症のことです。インフルエンザウイルスにはA型・B型・C型の3種類があり、例年国内で流行するのはA型です。

とくにA型はサブタイプ(亜型)の数が多く、人や動物に感染しながら少しずつ形を変えているため、抗体を獲得しにくい難点があります。一方のB型・C型は人にのみ感染し、不連続変異はないため、流行するリスクは少ないと考えられています。

インフルエンザウイルスの感染経路は、鼻やのどの粘膜です。発症までには「1〜5日(潜伏期間)」かかり、発熱や関節痛などの症状を伴います。

そもそもインフルエンザとは?

この章ではインフルエンザ感染症に関する基礎知識を確認しましょう。

インフルエンザの感染経路と流行時期

インフルエンザウイルスの感染経路には「空気感染」と「接触感染」の2種類があります。

空気感染は感染者がくしゃみや咳を飛沫させ、小さなウイルスを口や鼻から吸い込むことで感染するものです。一方、接触感染は感染者の唾(つば)や鼻みずが手や手の触れたドアノブなどを介して付着し、口や鼻にウイルスが入り感染するものです。

インフルエンザウイルスが冷たい環境でより長く生存できる上に、冬場は屋内で人が密集しやすくなるため、冬季に流行傾向にあります。とくに学校や職場などの集団生活を送る場所で長時間過ごす際は、感染対策を徹底しましょう。

インフルエンザの感染者数

インフルエンザの感染者数は年々で多少の変化はあるものの、毎年約1千万人が感染して、そのうち「214(2001年)〜1,818人(2005年)千人」が死亡しています。

インフルエンザは獲得免疫の少ない小児で感染しやすく、死亡率で見ると肺炎を患っていたり基礎疾患を抱えたりしている高齢者で多い傾向にあります。

ワクチンや治療薬があっても毎年流行すること、重症化しやすいことから、毎年適切な予防と対策が必要です。とくに1〜2月に感染者数がピークとなり流行は3月頃まで続くため、この時期には感染対策を徹底しましょう。

インフルエンザと風邪の違い

「インフルエンザ」と「かぜ」の違いは、原因となるウイルスです。インフルエンザは「インフルエンザウイルスA型・B型・C型」であり、かぜは「アデノウイルス・ライノウイルス」などが原因で発症します。

また、かぜは徐々に症状が強くなり、現れる場所も限られています。一方でインフルエンザは関節痛や強いだるさなどの症状が急激かつ全身に現れるのが特徴です。インフルエンザは重症化しやすく、基礎疾患がある方や免疫力が弱っている時はとくに注意が必要です。

インフルエンザの症状

インフルエンザの代表的な症状は以下のとおりです。

  • 高熱(38~40度が3〜5日続く)
  • 頭痛
  • 関節痛・筋肉痛
  • 強い寒気
  • せき
  • 強い倦怠感(だるさ)
  • のどの痛み
  • 鼻水
  • 食欲不振など

インフルエンザは風邪と同じように気道感染症の一種です。鼻の粘膜などから感染すると上気道に刺激を与え、鼻水・鼻詰まりなどの症状が現れます。また、発熱や関節痛、倦怠感など全身症状も出ることがあります。

とくにインフルエンザでは風邪とは異なり、重症肺炎やインフルエンザ脳症などの危険な合併症になるリスクがあるので、注意が必要です。

インフルエンザにかかりやすい人

インフルエンザは上気道の粘膜からウイルスが侵入することで感染します。感染しやすい人は、感染しにくい人と比べて唾液、粘液、繊毛などの上気道のバリア機能が弱い傾向にあります。

最近の研究によれば、唾液にはインフルエンザを防御する成分(結合型シアル酸)が含まれていることがわかってきました。したがって、唾液が少ない人は唾液の多い人よりもインフルエンザに感染しやすいのです。

さらに、気管支に侵入したウイルスなどの異物は、粘液に付着して線毛運動により排出されます。しかし、寒さや乾燥で線毛運動が弱まると、ウイルスを排出しきれずに感染率が高まるでしょう。

重症化しやすい人の特徴

重症化しやすい人の特徴は、以下のとおりです。

  • 子どもや高齢者
  • 基礎疾患がある人
  • 妊娠中の女性

肺機能が弱い子どもや高齢者は、重症肺炎になるリスクがあります。とくに、呼吸器系の基礎疾患のある方は、注意が必要です。

また、妊婦の方も重症化のリスクがあります。妊娠中は免疫機能が下がるため、ウイルスが体内に侵入してきた際の抵抗力が弱まります。妊娠後期は胎児の成長に伴いお腹が大きくなるため、肺が圧迫されて息がしづらくなります。結果として、肺炎などの合併症が起こりやすいと言われています。

確定診断|インフルエンザの検査と診断

この章では、インフルエンザ検査と診断基準についてお伝えします。

インフルエンザ検査について

インフルエンザ検査とは、インフルエンザの確定診断に用いられる検査です。専用の綿棒を鼻の奥まで入れて、粘膜を採取してインフルエンザウイルスの有無を確認します。

インフルエンザ検査の検査時間・費用や受けるタイミングについては「その症状はインフルエンザ?症状チェックリストで簡単に確認」の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

インフルエンザの診断基準

日本医師会によると、インフルエンザの診断は以下の3つをもとに行います。

  • 症状として急激な発熱、倦怠感、全身の痛み等の把握
  • 周辺地域の流行状況
  • 罹患(りかん)者との接触―などの総合的な状況

これらの診断でインフルエンザを疑う状態であれば「迅速抗原検出キット」が実施されます。ただし、迅速抗原検出キットはインフルエンザを診断するための補助的な検査であり、単体でインフルエンザの診断は行えないことに注意しましょう。

また、発症後12時間以上経つとウイルスの量が少なくなり「陰性」判定になる可能性もあります。そのため、検査結果に加えて症状を観察した上で診断されます。

インフルエンザの治療法

インフルエンザは対症療法が基本です。具体的な治療法は、以下のとおりです。

  • 薬剤治療
  • 安静

治療薬として抗インフルエンザ薬が処方されます。発症から48時間以内の投与が効果的であり、発熱期間が1〜2日短縮できると考えられています。発熱や関節痛などの症状に対しては、解熱・鎮痛薬で対処します。

薬剤治療で使われる薬は、副作用を考慮して年齢や基礎疾患をもとに選ばれるため、医師の処方を守って内服することが大切です。

また、薬剤治療とともに安静も治療の基本です。十分な睡眠をとるとともに、脱水予防のためスポーツドリンクや経口補水液などを小まめに補給しましょう。食事が進まなければ、ゼリーなどの喉越しの良い食べやすい物から摂取するのもオススメです。

ただし、自宅療養中に症状が悪化したら、早めに医療機関を受診しましょう。

効果的なインフルエンザ予防法5選

効果的なインフルエンザ予防法は、以下の5つです。

  • 予防法①:手洗い・うがい・消毒
  • 予防法②:免疫を高める
  • 予防法③:湿度の管理
  • 予防法④:人ごみを避ける
  • 予防法⑤:インフルエンザワクチンを接種する

詳しくは「インフルエンザ予防投与の効果と持続期間|ワクチンとの違いも解説」の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。

インフルエンザの原因に関するよくある2つの疑問を解説

この章では、インフルエンザの原因に関するよくある2つの疑問についてお答えします。

疑問①:インフルエンザ予防にマスク・手洗いは効果がありますか?

マスクによる予防効果には限界があると考えられています。理由として、マスク(不織布)の縫い目でできる穴の大きさは「5μm(マイクロメートル)」に対して、インフルエンザウイルスの大きさは「0.1μm」だからです。

そのため、ウイルスはマスクの布を通過し、完全に侵入を防ぐことは難しいでしょう。ただし、咳やくしゃみの飛沫感染を一時的に防ぐ効果は期待できます。

一方、手洗いは手に付着したインフルエンザウイルスを洗い流すため、体内への侵入確率を物理的に減らすことができます。うがいをすることで口から侵入したウイルスを洗い流したり、喉を刺激することで線毛運動(ウイルスを体外に出そうとする働き)を促進したりすることも可能です。

これらの対策を組み合わせることで、感染リスクを低減させることが重要です。

疑問②:インフルエンザにかかる人とかかりにくい人の差は何ですか?

インフルエンザにかかりやすいかどうかは「免疫力」によって決まります。免疫力は、外部のウイルスや細菌から体を守るバリア機能のことです。

免疫力が高い人は、インフルエンザウイルスが体内に侵入してきても阻止できます。一方で、免疫力が弱い人はウイルスに対する抵抗力が弱く、感染しやすいでしょう。

免疫力はすぐに獲得できるものでありません。運動習慣や栄養バランスの取れた食生活、規則正しい生活リズムの維持など、日頃の生活習慣の積み重ねで獲得できるものです。

短期間で免疫力を高めたいなら、予防接種を受ける必要があります。さらに予防接種を受けることで、たとえウイルスに感染しても重症化を予防できます。

まとめ: インフルエンザの原因を知り適切な予防行動を

インフルエンザになる原因は、インフルエンザウイルスに感染することです。例年冬場に流行するため、流行前に予防接種を受けたり、手洗い・うがい、人混みを避けたりするなどの予防行動が重要です。これらの対策を心掛けることで、インフルエンザの感染リスクを下げられるでしょう。

この記事が、インフルエンザに対する予防行動を考えるきっかけになれば幸いです。


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