インフルエンザ治療にはさまざまな薬剤が用いられます。この記事では、インフルエンザ治療に用いられる代表的な薬剤の効果や特性について詳しく解説します。
インフルエンザの治療法
この章では、以下の2つのインフルエンザの治療法について解説します。
- 一般療法
- 薬物療法
一般療法
一般治療とは生活療法とも呼ばれ、インフルエンザ治療の基本です。
安静に過ごすことでインフルエンザウイルスと戦うための体力を温存します。また発汗による脱水のリスクを考慮し、適宜水分補給や食べやすいものを摂取していくことも必要です。
加えて、自身が感染原となり周りに移さないためにも、換気や咳エチケットの徹底も意識できると良いでしょう。
薬物療法
一般治療と並行して薬剤療法も行われます。
薬剤療法ではインフルエンザウイルスの増殖を抑える薬が使われ、症状や炎症を和らげます。発症から48時間以内にインフルエンザ治療薬を投与できれば、治癒を早め、重症化の予防効果も期待できます。
つまり、インフルエンザは初期治療が早ければ早いほど軽い症状で済む可能性が高いのです。また、発熱に対しては解熱剤、咳や痰(たん)に対しては鎮咳薬や去痰薬などが処方されることもあります。
参考資料
医師法人社団 医新会"インフルエンザにかかったら"(参照2023/10/2) 厚生労働省"咳エチケット"(参照2023/10/2) 一般社団法人 日本感染症学会"日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~"(参照2023/10/2)インフルエンザの治療薬一覧と有効期間
この章では、インフルエンザの治療薬一覧と有効期限について解説します。
治療薬①:オセルタミビル(タミフル、オセルタミビル)
オセルタミビル(商品名タミフル、オセルタミビル)は、インフルエンザ治療に使用される抗ウイルス薬です。
インフルエンザA型・B型ウイルスに効果があり、発症から48時間以内に投与できればウイルスの増殖を抑え、症状の緩和や病期が1〜2日ほど短縮するとされています。
また、治療薬としてだけでなく、高齢者や基礎疾患がある方の予防薬としても用いられます。ただし、10歳以上20歳未満の人には原則禁止であり、腎臓機能が弱い方は副作用が強く出るなど、投与前に医師に相談が必要な場合もあります。
治療薬②:ペラミビル(ラピアクタ)
ペラミビル(ラピアクタ)は、インフルエンザA型・B型ウイルスに対するインフルエンザ治療薬です。
注射薬である特性を活かして内服薬や吸入薬が難しい場合に用いられます。血管に直接薬剤を投与するため効果発現までの時間が短く、緊急性の高い方への使用に向いています。
また、1回の注射で治療が終わるため、小児のインフルエンザ治療では重宝される薬でもあります。
副作用として下痢・吐き気・嘔吐などの消化器症状が報告されているため、投与後にこれらの観察が必要です。
治療薬③:バロキサビル(ゾフルーザ)
バロキサビル(ゾフルーザ)は、インフルエンザ治療に使用される抗インフルエンザウイルス薬です。
インフルエンザウイルスA型・B型に直接作用して増殖を防いで症状を改善し、治癒までの日数を1〜2日早める効果が期待できます。1回のみの経口薬で効果を発揮し、治療期間の短縮にも効果的です。
B型インフルエンザウイルスに対する解熱効果は、これまでに紹介した2剤よりも優れているとの報告もあります。
治療薬④:ザナミビル(リレンザ)
ザナミビル(リレンザ)は、インフルエンザ治療に使用される抗インフルエンザウイルス薬です。インフルエンザA型・B型ウイルスに直接作用して増殖を防ぐことで症状の改善を促します。
とくにB型インフルエンザへ効果が高いという報告もあります。
専用の吸入器(ディスクヘラー)として処方され、口から空気に乗せて吸い込み、ウイルスが悪さする上気道に直接薬剤を届けます。感染直後に使用できれば重症化予防や治癒までの期間を1〜2日早める効果が期待されるでしょう。
また、吸入薬である特性から全身への影響が少なく、副作用が起こりにくい薬であるため、小さなお子さんでも安心して使えます。
治療薬⑤:イナビル(ラニナミビル)
イナビル(ラニナミビル)は、インフルエンザ治療に使用される抗インフルエンザウイルス薬です。
インフルエンザウイルスA型・B型に直接作用して増殖を防ぎ、症状を改善し、治癒までの日数を1〜2日早める効果が期待できます。専用の吸入器を用いて口から吸い込み、インフルエンザウイルスが侵入する上気道に直接届いて効果を発揮します。
作用的には、オセルタミビル(タミフル、オセルタミビル)やザナミビル(リレンザ)と同じであり、副作用の影響も少ないとされています。
その他:解熱鎮痛剤
対症療法として解熱剤が処方されることもあります。
インフルエンザに処方される解熱剤は、アセトアミノフェン(カロナール、タイレノール)がオススメです。アセトアミノフェンは体温中枢に働きかけて熱を下げる効果があります。
NSAIDsという解熱鎮痛薬もありますが、インフルエンザ脳症を誘発する可能性があるため、慎重な処方が求められます。
また、小児にも使用できることから安全性の高い薬剤としても知られています。内服薬だけでなく、坐薬やシロップ、点滴など投与の選択肢が多く、状態に合わせて適切な投与方法の検討がしやすいメリットもあります。
参考資料
おくすり110番"オセルタミビル リン酸塩"(参照2023/10/2) 日本医薬情報センター"ペラミビル水和物注射液"(参照2023/10/2) おくすり110番"バロキサビル マルボキシル"(参照2023/10/2) 一般社団法人 日本感染症学会"キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬 バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザⓇ)の使用についての新たな提言"(参照2023/10/2) おくすり110番"ラニナミビル オクタン酸エステル水和物"(参照2023/10/2) 日本医薬剤情報センター"解熱鎮痛剤 アセトアミノフェン錠"(参照2023/10/2) 日本小児学会"日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会/2022/23 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針 P4"(参照2023/10/2) おくすり110番"ザナミビル水和物"(参照2023/10/2) 厚生労働省"インフルエンザ治療薬 up to date"(参照2023/10/2) 一般社団法人 日本感染症学会"日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~"(参照2023/10/2) 公益社団法人 福岡県薬剤師会"インフルエンザ脳症とNSAIDsの関連性は?"(参照2023/10/2)インフルエンザの治療に関するよくある4つの質問
この章では、インフルエンザの治療に関するよくある4つの質問についてお答えします。
- 質問①:子供にも使えるインフルエンザ治療薬はありますか?
- 質問②:インフルエンザに効く薬は市販されていますか?
- 質問③:インフルエンザのピークはいつですか?
- 質問④:自宅療養する場合の注意を教えてください
質問①:子供にも使えるインフルエンザ治療薬はありますか?
子どもにも使えるインフルエンザ治療薬と時期は、以下のとおりです。
- タミフル:生後2週間〜
- リレンザ:吸入可能なら5歳〜
- ラニナミビル:吸入可能なら5歳〜
- ラピアクタ:4ヵ月〜
タミフルの使用は、厚生労働省が投与後の異常行動との因果関係から10歳未満は控えるようにしていましたが、現在は「警告」の記述が削除されています。
ラピアクタは4か月から投与可能であり、重症化リスクの高い患者を対象に使用するか検討されます。
質問②:インフルエンザに効く薬は市販されていますか?
インフルエンザ治療薬は市販されていません。発熱に効果のあるアセトアミノフェンは販売されていますが、こちらはあくまで対処療法としての使用になります。
また、市販されている解熱剤の中にはNSAIDsと呼ばれる薬もあります。しかし、NSAIDsはインフルエンザ脳症やライ病といった重篤な合併症を引き起こすリスクがあり、推奨されていないので注意しましょう。
インフルエンザ治療薬がほしいなら、医療機関で確定診断を出してもらい、医師から処方してもらいましょう。
質問③:インフルエンザのピークはいつですか?
流行時期のピークは「1月末〜3月上旬」です。そのため、12月までには予防接種を済ませて、インフルエンザウイルスが流行る時期に備えておく方が良いでしょう。
症状のピークはインフルエンザウイルスの増殖がピークの「発症から48時間」です。その後は徐々に軽快していきます。ただし、状態によっては症状が継続的に見られたり、48時間よりも早めに症状が改善したりする場合もあります。
質問④:自宅療養する場合の注意を教えてください
インフルエンザやその疑いがある方が自宅療養をする場合の注意点は、以下のとおりです。
- 安静かつ十分な睡眠時間を確保する
- 水分摂取を心がける
- 食べられるものから摂取する
- 湿度管理をする(湿度:50~60%)
- 体温の動向を記録しておく
口あたりや消化の良いものから摂取しましょう。食欲があまりない場合でも、脱水予防やのどの粘膜の乾燥を防ぐために、小まめに水分補給を意識することが大切です。塩分摂取も兼ねて、経口補水薬やスポーツドリンクなどがオススメです。
症状が悪化している場合は重症化予防のため、早めに医師に相談する方が良いでしょう。
参考資料
おおこうち内科クリニック"子供~大人までの抗インフルエンザ薬の選び方"(参照2023/10/2) 日本医事新報社"「タミフル」の10代使用制限を解除 ─異常行動への注意喚起は継続[医療安全情報UpDate]"(参照2023/10/2) KEGG DRUG Database"ラピアクタ"(参照2023/10/2) 公益社団法人 福岡県薬剤師会"インフルエンザ脳症とNSAIDsの関連性は?"(参照2023/10/2) 厚生労働省"小児のライ症候群等に関するジクロフェナクナトリウムの使用上の注意の改訂について"(参照2023/10/2) 厚生労働省"インフルエンザQ&A"(参照2023/10/2) 医師法人社団 医新会"インフルエンザにかかったら"(参照2023/10/2)まとめ: インフルエンザ治療薬が有効なのは発症から48時間以内
インフルエンザ治療薬が有効なのは発症から48時間以内です。そのため、インフルエンザを疑う症状があれば、早めに受診して治療薬を投与することが、早期回復や重症化予防のカギになるでしょう。
また、インフルエンザ治療薬は市販では入手できません。医師による診断結果をもとに適切な治療を受けるためにも、受診を検討しても良いのではないでしょうか。