治験情報V-NET 治験特集コラム

アトピー性皮膚炎の治療について

アトピー性皮膚炎の治療の最終目標は、症状がないか、症状があっても軽微で日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持することです。
症状がこのレベルに到達しない場合でも、症状が軽度もしくは軽微で、日常生活に支障をきたすような悪化が起こらない状態を維持することを目標としています。

治療方法

アトピー性皮膚炎の治療方法は、①薬物療法 ②皮膚の生理学的異常に対する外用療法・スキンケア ③悪化因子の検索と対策の三点が基本と示されています。
いずれも重要で症状の程度や背景などを踏まえて適切に組み合わせる必要があります。

アトピー性皮膚炎は遺伝的素因も含む、複数の原因から発症する疾患でもあり、完治させる治療方法は今のところありません。
したがって薬物療法は対症療法として行うことが原則です。
症状が出ている部分では皮膚の炎症による皮膚バリア機能の低下や、かきむしりの刺激によってますます悪循環が生じる可能性があるので、薬物療法で炎症を防ぐことはアトピー性皮膚炎が悪化する原因を減らすことにもつながります。

※対症療法...表面化している症状を緩和させ、苦痛を和らげるための治療法

治療薬について

アトピー性皮膚炎の炎症を十分に鎮静するための薬剤の中で、現時点で最も有効性と安全性が多くの臨床研究で検証されている薬剤は「ステロイド外用薬」と「タクロリムス軟膏」です。

ステロイド外用薬は副腎皮質ホルモンで腎臓の上に存在する小さな臓器「副腎」で生産されるホルモンです。
副腎皮質ホルモンはさらに種類が分かれていて、糖質コルチコイド、電解質コルチコイド、副腎アンドロゲンの3種類があります。アトピー治療で使われるのは糖質コルチコイドの合成体です。
ステロイド外用薬は、抗炎症外用薬として小児および成人を対象に使用されています。

タクロリムス軟膏は細胞内のカルシニューリンを阻害する薬剤で、副腎皮質ステロイドとは異なる作用のメカニズムで炎症を抑制します。
タクロリムス軟膏は安全性の問題から2歳未満の小児や授乳中の婦人は使用ができません。また、成人であっても傷口など直接血液に触れる部分には使用できません。

スキンケアについて

アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能と保湿成分が減少していて乾燥肌(ドライスキン)の状態となります。
そのため皮膚に刺激があるとかゆみが起こりやすかったり、様々なアレルゲンが侵入しやすくなるため、皮膚炎を引き起こしやすくなると考えられています。
保湿外用剤の使用をすると、アトピー性皮膚炎で低下している角質層の水分含有量の改善や皮膚バリア機能の回復・維持をして、アレルギー物質の侵入予防と皮膚の再燃補予防、痒みの抑制につながります。
また、出生直後から保湿外用剤によるスキンケアを行うことは、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げると考えられています。

皮脂汚れや汗などの体液の付着、アトピーでじゅくじゅくしている部分には黄色ブドウ球菌などの菌が繁殖していることも多く、皮膚症状が悪化する原因にもなります。
シャワーやお風呂に入って皮膚を清潔に保つことは、皮膚の働きを保つためにも重要です。

ページトップへ