不眠症の対策法について

「寝つきが悪い」「十分寝たはずなのに日中強い眠気に襲われる」など不眠症状は人それぞれです。そして、ご自身の原因に対して適切な対策を行わなければ、改善は難しいでしょう。

そこでこの記事では、不眠症を克服するための実践的な対策法についてご紹介します。健康的な睡眠習慣を確立するためにも、生活改善にて睡眠の質を高めましょう。

不眠症の対策方法は2つ

不眠症の対策には、非薬物療法と薬物療法の2種類があります。

非薬物療法は不眠症の根本的な原因を取り除く治療として行われます。規則正しい睡眠スケジュールの確立や適切な睡眠環境の整備などが行えるように、生活習慣や行動の改善を促します。

睡眠障害治療の導入に用いられ、治療方法は患者の状態や好みによって異なるため、医師と相談しながらご自身に最適な治療方法を検討していく必要があるでしょう。

一方の薬物療法とは、対処療法として薬剤を用いて行われる補助的な治療のことです。特定の睡眠薬や精神安定剤を処方して、睡眠の質や量の改善を目指します。ただし、薬剤の長期使用は依存症や副作用のリスクがあるため、医師の監督下のもと適切に治療を進めていく必要があります。

不眠症対策のための非薬物療法|5つの生活改善

この章では、根本的な原因を取り除くために行う非薬物療法について解説します。医療機関を受診する前に始められる生活改善もあるため、ぜひご活用ください。

生活改善①:快適な就寝環境

就寝環境の見直しを行うことで不眠症が改善されることがあります。

具体的な就寝環境の見直しは、以下のとおりです。

  • 就寝時の照明の明るさ
  • 寝衣や寝具

就寝時は間接照明やフットライトなど光刺激が直接当たらない環境にしましょう。就寝前に強い光刺激を受けると体内時計が狂い、入眠が難しくなるからです(※)。

また、寝やすい寝衣や寝具、環境調整も忘れてはいけません。動きやすさやリラックスできる寝衣・ベッドマット・枕を検討したり、音刺激に対しては耳栓を活用したりするなどの方法があります。

これらの調整だけでも不眠症対策や睡眠の質を上げられます。

生活改善②:規則正しい食生活

規則正しい食生活は、不眠症対策を行う上で重要な要素です。

なぜなら食事のリズムは体内時計と関係が深く、規則正しい食生活が睡眠サイクルを安定させるからです。

特に朝食の摂取は、心身の覚醒を促すとともに1日のリズムを作る役割があります。一方で入眠直前に飲食をすると消化活動が活発になり、胃やお腹の不調の原因になります。胃や腸の不快感は入眠を妨げたり、中途覚醒の原因になるため注意しましょう。

入眠前や夜ご飯以降は、リラックス効果のあるカモミールティーや覚醒を促さないようにノンカフェインコーヒーがオススメです。

生活改善③:適度な運動

国内外の疫学研究(数千人を対象とした質問紙調査)では、運動習慣がある方は不眠症になるリスクが低いことがわかっています。具体的な効果としては、「入眠がスムーズ」「深い眠りを得られる」という点があります。

ただし、一過性の運動ではなく、あくまで長期的な運動習慣のある場合の話です。

運動はストレスホルモンであるコルチゾールの分解を促進して、不安や緊張を緩和します。特に退職後、活動量の減る高齢者は運動習慣が不眠症の対策・予防として効果的です。

一方で、激しい運動は入眠前の過刺激となり逆効果であるため、注意しましょう。負担が少ない有酸素運動(早足の散歩など)が就寝前の運動として適しています。

また、運動するタイミングとしては、夕方から夜(就寝の3時間くらい前)が目安です。適切な時間に軽い運動習慣を設けて、効果のある不眠症対策ができるようになりましょう。

生活改善④:入浴

入浴には、以下の2つの効果が期待できます。

  • 入眠までの体温調節
  • リラックス効果

入浴後は一時的に体温が上昇します。その後、体温が急速に下がるタイミングで睡魔を感じます。

また、湯船に浸かると筋肉の緊張が緩み、副交感神経優位になるため心拍数や血圧が下がり、気持ちがリラックスします。副交感神経は「休息・消化・回復」をする際に優位となり、リラックスや体の修復に関与します。

入眠を促すなら入浴のタイミングは「就寝の2〜3時間前」が理想的です。これにより、不眠症の主な要因であるストレスや緊張が緩和され、睡眠の質を高められます。

生活改善⑤:ツボ押し

東洋医学の観点からツボ押しで不眠症対策をする方法もあります。

たとえば、代表的なツボとして「失眠(しつみん)」「百会(ひゃくえ)」などがあります。

失眠は足裏かかとの中心、かかとの中央の少しへこんだところにあるツボです。刺激すると気持ちをリラックスさせて眠気を誘う効果があるとされています。指圧するか、テニスボールやワインコルクを踏んで刺激すると良いでしょう。

百会は頭のてっぺん(両耳を結んだ線と鼻から上に通る線が交わる場所)にあるツボです。刺激すると肩こり・目の疲れを和らげ、自律神経を整える効果があります。指圧マッサージで刺激すると良いでしょう。

不眠症対策のための薬物療法

この章では、不眠治療薬の種類や治療上の注意点・ルールについて触れていきます。

不眠治療薬の種類

不眠治療薬における「種類」「代表的な商品名(一般名)」「効果」「副作用」について、以下の薬剤を表にまとめます。

種類 代表的な商品名(一般名) 効果 副作用
GABA受容体作動薬(ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系) ・マイスリー(ゾルピデム)
・デパス(エチゾラム)
・ハルシオン(トリアゾラム)
など
脳の興奮を抑えて眠りに導く効果 ・ふらつき
・脱抑制(年齢不相応な行動をする)
・転倒
・依存性
メラトニン受容体作動薬 ・ロゼレム(ラメルテオン) メラトニン(睡眠を促すホルモン)の分泌を促し、体内時計を整えることで入眠を促す効果 ・めまい
・頭痛
オレキシン受容体拮抗薬 ・ベルソムラ(スボレキサント)
・デエビゴ(レンボレキサント)
オレキシン(覚醒を促すホルモン)の分泌を抑えて、入眠を促す効果 ・めまい
・頭痛
・易疲労感
・悪夢

薬物療法を行う際の注意点

睡眠薬はその名の通り、睡眠をサポートするお薬です。主作用に眠気や気持ちを落ち着かせる効果がある一方で、副作用で注意力や認知力が低下します。そのため、車の運転や危険な機械操作を避けるべきしょう。

アルコールと一緒に内服すると、重度のふらつきや物忘れ、おかしな行動などが出現するリスクがあるため厳禁です。また、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドには覚醒を促す作用があり、睡眠の質を低下させます。

薬物療法を行う際のルール

前提として、重度の不眠症状があり非薬物療法では治療困難な場合を除き、基本的にははじめに非薬物療法が適応になります。非薬物療法に一定の効果が見られないなら、非薬物療法と並行して薬物療法の適応となります。

薬物の種類や投与量は、患者の症状や健康状態に合わせて個別に調整されています。そのため、医師の指導に基づいて正確な処方箋を受けながら、定期的なフォローアップを受けることが必須です。

自己判断で増薬・減薬または退薬をすると副作用が強く出たり、退薬症状のリスクが高まったりするため、薬剤量の調整は必ず医師と相談しながら行いましょう。

退薬症状の詳細については、以下の表をご覧ください。

精神症状 ・不安感
・焦燥感
・集中力の低下や記憶障害
・抑うつ状態
・イラつき
・不眠
・離人感
身体症状 ・食欲低下
・体重減少
・筋肉痛や痙攣・攣縮など
・悪心・嘔吐
・振戦
・心季亢進・発汗
・頭痛
・めまい
知的症状 ・知覚過敏(音・光・匂いなど)
・身体動揺感
・金属味

まとめ: 寝つきの悪さを感じるなら医療機関に相談を!

不眠症対策には、今ある不眠症状の改善目的で対処療法として行う「薬物療法」と、不眠症の根本的な原因を取り除く「生活改善」の2種類があります。

薬物療法を行う際は医師の指示を守り、副作用に注意しながら治療継続をすることが大切です。一方の生活改善は日々の積み重ねで徐々に不眠症対策を進められます。そして今日からでも始められる方法ばかりです。

今回、紹介した不眠症対策を参考に、ご自身の生活に取り入れられそうな方法を模索してみましょう。

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