睡眠障害を探る11つの検査

現代人にとって睡眠障害は深刻な問題となっています。ご自身の睡眠障害の原因を明らかにし、適切な治療を行うことが睡眠の質を上げる第一歩です。

本記事では、睡眠障害の根本原因を探り、解決への一歩を踏み出すための11つの検査手法を徹底解説します。

睡眠障害の診断に用いる11つの検査

この章では、睡眠障害の診断に行われる代表的な11つの検査について解説します。

検査1:睡眠ポリグラフ検査(PSG)

不眠症対策には「薬物療法」と「生活改善」の2種類があります。

睡眠ポリグラフ検査(PSG)は夜間の睡眠状況を観察し、睡眠時の異常や日中の眠気の原因を探る目的で行われる検査です。睡眠時無呼吸症候群や不安定な睡眠パターンなどの障害を明らかにする際に行われます。

検査結果をもとに適切な治療法や生活習慣の改善を提案し、患者の睡眠状態の向上を目指します。

具体的な検査内容は、寝ている間に脳波、心拍数、呼吸数、筋電図などの生体情報を記録し、睡眠の質や異常なパターンを詳細に分析することです。基本的には1泊2日で行われます。

患者は就寝前にセンサーを身に着け、機器が睡眠中の生体データを記録します。これにより、医師は睡眠の各段階や異常な事象を把握し、適切な診断と治療を提供できるのです。

検査2:CPAP圧設定検査・口腔内装置

CPAP圧設定検査は睡眠ポリグラフ検査(PSG)で睡眠時無呼吸症候群と診断され、医師が必要と判断した場合に行われる検査です。

CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)機器は、特殊な装置から供給される一定の空気圧によって気道を開かせ、睡眠中の呼吸をサポートする機械のことです。CPAP圧設定検査では、医師が患者の睡眠時の呼吸パターンや気道の状態を詳細にモニタリングし、CPAPの最適な治療圧を観察・決定します。

また、睡眠時無呼吸症候群の軽症~中等症の方は、歯科と連携して口腔内装置(マウスピース)の作成を行う場合もあります。

検査3:睡眠潜時反復検査(MSLT)

睡眠潜時反復検査(MSLT)は過度の眠気や昼間の居眠りなどの原因を客観的に評価し、重症度判定を行う目的で行われる検査です。

具体的には、患者の睡眠潜時(眠気が現れるまでの時間)を測定します。

検査の手順は、患者に複数回の短時間の仮眠(およそ2時間に1回のペース)をとってもらい、その間にどれだけ早く眠気が現れるかを記録します。これにより、患者の睡眠状態や異常な眠気の原因を観察できます。

特に「ナルコレプシー」と呼ばれる日中の病的な眠気の診断に有効な検査です。

検査4:覚醒維持検査(MWT)

覚醒維持検査(MWT)は患者の覚醒状態や眠気の持続性を評価する目的で行われる検査です。MSLTは過眠症状の鑑別診断と重症度判定に優れた検査であるのに対して、MWTは覚醒維持能力評価に特化した検査という位置付けです。

具体的には、眠気を誘う環境下で覚醒状態を維持する能力を測ります。

検査の手順は、患者に数回の短時間の仮眠をとってもらい、その間にどれだけ目を覚まし覚醒状態を維持できるかを記録します。

MWTは主に「過度の昼間の眠気」や「仕事中の運転中に眠気を感じる」などの症状が見られる場合に行われ、異常な眠気の原因や度合いを観察できます。これにより、患者の昼間の覚醒力に合わせた治療が行えます。

検査5:下肢不動化検査(SIT)

下肢不動化検査(SIT)は覚醒時の下肢不快感(周期性四肢運動)の状況を観察し、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)の診断目的で行われる検査です。

睡眠ポリグラフ検査(PSG)と並行して行われる場合もあり、検査自体は1時間程度でできます。

具体的には、1時間程度ベッド上で足を伸ばして座って過ごします。検査中は足がむずむずしたり、違和感を感じたりしても我慢し、10分ごとに下肢の不快感の強さを記録します。

レストレスレッグス症候群について詳しく知りたい方は「不眠症の原因・症状となりやすい人の特徴」の記事が参考になるので、ぜひご覧ください。

検査6:脳波検査

脳波検査は睡眠中のてんかんなどの発作性意識障害を調べる目的で行われる検査です。睡眠中に発生する脳の異常な活動を検出します。

患者は頭に電極を取り付け、脳波のパターンを記録します。体を傷をつけることなく正確なデータを提供することから、睡眠障害の病態を理解する上で欠かせない検査です。

検査7:肺機能検査

肺機能検査は睡眠障害と呼吸状態(呼吸機能の低下)の関係性を調べる目的で行われる検査です。患者の肺の働きや呼吸機能(肺活量や換気機能)を測定し、睡眠中の異常な呼吸パターンや障害を詳細に分析します。

具体的には、専用の装置を使って深呼吸や吸気・呼気の流れを測定します。検査時間は数分程度であり、身体的な負担を最小限に抑えられるメリットもあります。

検査8:鼻腔通気度検査

鼻腔通気度検査は睡眠時無呼吸症候群の治療方針を決定する目的で行われる検査です。

具体的には、鼻にセンサーを装着して寝ている間の両鼻の通気状態を計測します。これにより、鼻の通気度や閉塞の程度を評価し、異常なパターンを把握します。

検査時間も数分程度で終わり、身体的な負担も少ない検査です。

検査9:末梢神経伝導速度検査・H反射検査

睡眠障害の原因が末梢神経障害と疑われる場合は、末梢神経伝導速度検査・H反射検査が行われます。

末梢神経伝導速度検査とは、睡眠障害において末梢神経の機能や異常を評価するために行われる検査のことです。電極を用いて神経に刺激を与え、その伝導速度を計測することで末梢神経の機能を調べます。

一方のH反射検査とは膝の腱反射を評価する手法で、神経系の異常を検出する目的で行われる検査のことです。膝に軽くハンマーを叩き、その反応を観察します。

これら2つの検査から睡眠障害の原因が末梢神経障害によるものとわかれば、末梢神経障害を改善するための治療が行われます。

検査10:アクチグラフ検査(睡眠・覚醒パターンの測定)

アクチグラフ検査(睡眠・覚醒パターンの測定)は、患者の活動レベルや睡眠のパターンなど日内分布を詳細にモニタリングすることで、睡眠障害の特定や評価する目的で行われる検査です。

具体的には、腕時計型の小さなデバイス(アクチグラフ)を装着して1〜2週間ほどいつも通りの生活を送ります。検出したデータから不眠症や概日リズム睡眠障害の程度を把握し、診断に活かします。

検査11:アクチグラフ検査(周期性四肢運動の測定)

アクチグラフ検査(周期性四肢運動の測定)は、睡眠中の手足の周期的な運き(周期性四肢運動)を測定し、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)などの診断目的に行われる検査です。

具体的には、就寝前手足4か所に小型の装置を着け、朝覚醒後は外すだけです。日にちによって手足の周期的な動きの出方は異なるため、検査期間は3〜5日ほど設けられます。

測定されたデータを元にレストレスレッグス症候群の診断を行います。

睡眠障害の診断基準

睡眠障害の診断は問診・検査結果などから総合的に行われます。

具体的には以下の内容について調べます。

問診・診断項目内容
症状の持続期間症状が一定の期間(通常3日以上から1ヶ月以上)続いているか診断
日中の機能の影響睡眠障害が日中の機能に影響を及ぼしているかの診断
注意力や集中力の低下、イライラ、疲労感などが含まれまれる
症状の重症度症状の程度が一定の基準を満たしているか診断
入眠困難、深夜覚醒、早朝覚醒、過度な日中の眠気などが含まれる
生活状況の影響睡眠障害が患者の日常生活に与える影響の診断
仕事や学業、社交活動などへの影響が診断に影響を与える要素

睡眠障害の検査が受けられる診療科

睡眠障害の原因によって受診する診療科が異なります。そのため、まずは内科を受診して睡眠に関する相談をしてみましょう。内科の診断結果をもとに、より専門的な治療ができる診療科に受診するのが確実です。

各睡眠障害の診断と受診すべき診療科の一例については、以下の表をご覧ください。

不眠症生活習慣が原因なら「内科」
ストレスや緊張が原因なら「精神科」や「心療内科」
過眠症内科・精神科・脳神経内科・呼吸器内科・心療内科など
概日リズム睡眠障害精神科・心療内科・神経内科など
睡眠時無呼吸症候群耳鼻咽喉科・歯科口腔外科、国民健康など
睡眠時随伴症脳神経内科・精神科など

睡眠障害の検査にかかる費用

睡眠障害の検査費用の相場は、以下の表をご覧ください。

検査の種類費用相場(3割負担)
睡眠ポリグラフ検査(PSG)10,000円~50,000円
CPAP圧設定検査・口腔内装置3,000〜5,000円
睡眠潜時反復検査(MSLT)8,000円~25,000円
覚醒維持検査(MWT)保険適用外(病院ごとで異なる)
下肢不動化検査(SIT)PSGに含まれることが多い
脳波検査3,000円
肺機能検査1,500円~
鼻腔通気度検査1,000円程度
末梢神経伝導速度検査・H反射検査3,000円~(検査する神経や本数で異なる)
アクチグラフ検査(睡眠・覚醒パターンの測定)保険適用外(レンタル機器により異なる)
アクチグラフ検査(周期性四肢運動の測定)保険適用外(レンタル機器により異なる)

相場からもわかる通り、検査費用には開きがあります。

理由は保険適用される検査とされない検査があるからです。特に保険適用されない自由診療の検査は、病院やクリニックごとで検査費用を決められるため相場に開きが生じます。

また、これに加えて入院日数が多い検査になると、入院費用も追加されます。そのため、検査費用に入院費用も加えて費用を想定しておく必要があります。

確実な検査費用が知りたければ、一度受診先に確認しておくことをオススメします。

まとめ: 適切な検査で睡眠障害の原因を明らかにしよう

睡眠障害の原因はさまざまです。適切な治療を受けるためにもまずは原因を探ることが重要です。そこで本記事で紹介した睡眠障害の11の検査を参考にしていただけると幸いです。

また、原因によって受診すべき診療科も異なります。受診先に悩んでいる方はまず内科を受診し、診断結果を元により専門的な診療科をしましょう。

検査には保険が適用されない場合もあり、予想以上の費用がかかることがあります。検査費用の相場についてもご紹介していますので、ぜひご覧ください。

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