片頭痛の原因

片頭痛の決定的な原因は明らかにされていません。しかし、医学的な観点から5つの原因があると考えられています。

これら5つの原因を理解しておくと、発症予防や自分なりの片頭痛への付き合い方も考えられるので、ぜひ最後までご覧ください。

片頭痛(偏頭痛)の5つの原因

片頭痛の原因は、主に5つあります。

  • ①:脳血管の広がり
  • ②:三叉神経への刺激
  • ③:遺伝的要因
  • ④:生活環境の刺激
  • ⑤:性別

ご自身の状況と照らし合わせながら原因を探ってみましょう。

原因①:脳血管の広がり

片頭痛を感じる原因として脳血管の拡張が挙げられます。脳血管が広がる主な原因は以下のとおりです。

  • 過度なストレスからの解放
  • 温度や湿度の変化
  • アルコールの摂取
  • 内服薬の影響

たとえば、過度なストレスや心身の疲労から解放されるタイミングで血管が広がり片頭痛を発症します。「重要なプレゼンテーションが終わった後」や「大切な試合に勝って安心した時」などです。

脳血管の広がりによる片頭痛のメカニズムには個人差があるため、症状が気になる場合には専門医の診断を受けましょう。

原因②:三叉神経への刺激

片頭痛の発症には、血管周囲の三叉神経の刺激も関係しています(※)。

三叉神経は顔面の感覚を脳に伝える顔の血管周囲にある神経です。三叉神経が刺激されると炎症物質が分泌され、脳内の三叉神経核に伝わり、痛みを引き起こします。

洗顔や歯磨きなど顔を冷やすことも三叉神経を刺激します。頭の片側に限局し、目の周囲や奥にドクドクとした痛みがあるなら、片頭痛の可能性が高いでしょう。

この症状は数分から数時間続くのが一般的です。しかし、中には数か月続くケースもあり、生活に支障をきたします。そのため、医療機関を受診して早めに治療を始めましょう。

原因③:遺伝的要因

片頭痛は家族内での発症例が多く、遺伝が関係しています。とくに連鎖解析や双子研究からは遺伝的な要因が確実であり、複数の遺伝子が関与していると明らかにされました。

つまり、両親や祖父母が片頭痛持ちだと、ご自身も発症リスクが高くなります。心当たりがあれば、早めに医療機関を受診して精査してもらいましょう。

原因④:生活環境の刺激

片頭痛は生活環境の刺激が原因で発症します。

たとえば、光や音、におい、気圧の変化などが挙げられます。映画館やコンサート会場のような光や音の刺激が強い場所では、片頭痛になりやすいため、できる限り避けた方が良いでしょう。

また、急激な気圧の変化も片頭痛の原因です。そのため、エレベーターではなく階段やエスカレーターを利用するなどの対策が必要です。

加えて、過度なストレスを感じやすい生活環境では、片頭痛を含む慢性頭痛のリスクが高まります。ストレッチや適度な運動はストレス解消に効果的なので、ぜひ生活習慣に取り入れてみましょう。

原因⑤:性別

片頭痛の原因や有病率は性別によって異なります。全体だと「約8,4%」、女性は男性よりも「3〜4倍」高いとわかっています(※1)。

女性は月経周期中にエストロゲンと呼ばれるホルモンを分泌します。このエストロゲンの分泌量が減ると、セロトニンなどの神経伝達物質のバランスが崩れて、月経関連片頭痛(※2)を引き起こします。

痛みの強さに性別差はありません。一方で女性の方が発症率が高く、持続時間も長い傾向にあります。また、月経中(生理中)に起こる片頭痛は、月経症状と相まって薬が効きにくく、症状を強く感じる方も少なくありません。

【チェックリストあり】片頭痛(偏頭痛)の種類・症状・前兆

片頭痛の症状や前兆は人それぞれです。この章では片頭痛の種類や一般的な症状・前兆について解説します。

ご自身の状況と照らし合わせて読むと、片頭痛への理解が深まります。

頭痛の種類

頭痛は「一次頭痛」「二次頭痛」に分けられます。

一次頭痛は別名「慢性頭痛」とも呼ばれ、以下の3つの頭痛の総称です。

  • 片頭痛
  • 緊張型頭痛
  • 群発頭痛

それぞれの頭痛で原因や発生頻度は違いますが、数か月単位で慢性的に症状に悩まされる共通点があります。一次頭痛の治療は、痛みの程度に合わせた「痛み止め薬」と「予防薬」による薬物コントロールが基本です。

二次頭痛とは脳血管疾患が原因で発症する頭痛です。主な脳血管疾患として、以下が挙げられます。

  • くも膜下出血
  • 脳出血
  • 脳腫瘍
  • 慢性硬膜下血腫
  • 髄膜炎・脳炎

早期治療をしなければ命にかかわる重篤な状態になりかねません。そのため、頭痛がひどい場合には早めに医療機関を受診しておきましょう。

片頭痛の前兆

片頭痛は突発的に起こると思われがちですが、前兆があるケースもあります。 中でも「閃輝暗点」という視覚異常は有名であり、視界にギザギザやキラキラとした光が現れるのが特徴です。医学的に見ると、後頭葉の血流低下で縮んだ血管が元に戻るタイミングで発症します。

これは片頭痛が血管が広がるタイミングで発症することと関係しています。

この他にも、光や音などの環境による過刺激や、眠気や空腹感も前兆です。これらの前兆を把握しておくと、片頭痛の発症を予測しやすくなるでしょう。

片頭痛の症状と経過

以下の症状がある方は片頭痛が疑われるため、一度病院に受診することをオススメします。

  • 片方だけ頭痛になる
  • ドクドクした痛みを感じる(拍動感がある)
  • 日常生活に支障が出るほどの症状が続く
  • 体動で痛みが強くなる
  • 気分不良や吐き気が伴う
  • 光や音などの刺激に過敏になった

ただし、片頭痛の他にも脳血管疾患による頭痛のリスクもあるため、注意が必要です。

片頭痛の症状は、以下の経過(※)をたどります。

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持続期間は人によって違いますが、およそ「4時間〜数日間」続きます。次第に症状は軽くなり、最終的に消失します。

片頭痛(偏頭痛)は治る?診断と治療法について解説

慢性的な片頭痛の完治は困難ですが、適切な治療を行えば上手くコントロールすることが可能です。ただし、適切な治療を受ければ、うまく付き合えます。

では、片頭痛の診断と治療法、受診すべき診療科について詳しく見ていきましょう。

片頭痛の診断

片頭痛の診断には、国際頭痛分類(※1・2)が用いられます。

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片頭痛の診断では、まず脳血管疾患による二次頭痛を除外し、その後片頭痛の症状と照らし合わせます。

代表的な診断基準は「ドクドクと拍動性のある片側だけの頭痛」「発作後4〜72時間続く」などです。また、体動時の痛みの変化や発生頻度などから、その他の一次頭痛ではないと確認して、確定診断に導きます。

確定診断が行われれば適切な治療が行われるため、早めに症状を改善できるでしょう。

片頭痛の治療と受診すべき診療科

片頭痛は完治するのが難しいため、症状をコントロールしながらうまく付き合っていくのを前提として治療を検討することが重要です。

治療は薬物療法が基本です。症状に合わせて「痛み止め」と「予防薬」を用います。ただし、薬剤の多用は薬物乱用性頭痛の原因にもなるため、注意が必要です。

薬物乱用性頭痛になると、発症への不安から過剰内服や薬剤効果への感度が下がりして頭痛を感じやすくなります。

医師の処方量を守った上で、安全に薬剤治療を進めていくことをオススメします。

処方される薬の種類については、次章の「予防法①:定期薬の内服」で詳しく解説しています。また、日本頭痛学会(※)のホームページから各都道府県の認定頭痛専門医のいる病院を探せるため、受診を検討中の方は、ぜひご活用ください。

症状コントロールを目的とした片頭痛(偏頭痛)の3つの予防法

片頭痛の症状はコントロールできます。この章では、片頭痛の3つの予防法について解説します。

  • ①:定期薬の内服
  • ②:生活習慣の改善
  • ③:食生活の改善

これらの予防法を理解した上で、取り入れられそうなことから始めてみましょう。

予防法①:予防薬の内服

「頓服の内服をしても頻発する」もしくは「症状が全く改善しない」なら、予防薬(※1)による症状コントロールがオススメです。

予防薬とは、痛み止めで症状が改善しない方が、薬の使用回数を減らす目的で処方される薬です。薬剤乱用頭痛のリスクを減らす効果もあり、片頭痛ではメジャーな治療法の一つです。

片頭痛の治療薬効果
カルシウム拮抗剤(※2・3) 血管壁の細胞にカルシウムが入り血管収縮を促し、片頭痛を和らげます。
抗てんかん剤(※4) 神経細胞の興奮を抑えて片頭痛を和らげます。
β-ブロッカー(※5) 高血圧や冠動脈疾患などの合併症がある片頭痛患者を和らげるのに効果的とされています。
抗うつ剤(※6) セロトニンの分泌を増やし血管収縮を促して片頭痛を予防します。
漢方薬(※7) 冷えを予防して片頭痛の主症状や合併症を予防する効果があります。

予防薬は医療機関による診断に基づいて処方されます。まずは医療機関を受診して片頭痛の診断を出してもらいましょう。

予防法②:生活習慣の改善

片頭痛を予防するためには、生活習慣の改善も重要です。生活習慣が乱れると自律神経のバランスが崩れ、片頭痛を引き起こしやすくなるからです。

改善すべき具体的な生活習慣は以下のとおりです。

  • 不規則な生活リズム
  • 慢性的な睡眠不足
  • 過度なストレス
  • 栄養バランスの乱れた食生活

規則正しい生活を心がけるとともに、適度な運動もオススメです。

とくに朝の運動は日光を浴びるため体内時計がリセットされ、活動と休息のメリハリがつきます。また、片頭痛の原因となる筋肉の凝りをほぐすだけでなく、ストレスの軽減にも効果が期待できるでしょう。

予防法③:食生活の改善

血管を広げる作用のある食べ物は、片頭痛を引き起こすため、避けましょう。

なぜなら、片頭痛は血管が広がるタイミングで発症するからです。

血管を広げる具体的な食べ物(※1)として、以下が挙げられます。

  • チョコレート
  • チーズ
  • 赤ワインなどのアルコール類など

たとえば、チョコレートに含まれるポリフェノールは血管壁で一酸化窒素(NO)を作り、血管を広げます(※2)。

摂取後の症状の程度は人それぞれであるため、全く食べてはいけないわけではありません。大切なのは、摂取後の状態を医師に伝えて、摂取量を決めておくことです。

まとめ: 片頭痛の原因を探るためにも医療機関を受診しましょう

片頭痛は脳血管が広がることや顔面にある三叉神経が刺激されることで発症するとわかりました。片頭痛は命にかかわる頭痛ではありません。しかし、二次頭痛のように早期発見・治療をしないと重篤な状態になりかねない頭痛も存在します。

そのため、片頭痛を疑っているなら、早めに医療機関を受診して精密検査をしてもらいましょう。診断が出れば、症状に対する適切な治療を受けられます。


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