片頭痛の明確な原因は解明されておらず、完治もしません。
ただし、症状コントロールができれば、支障がなく日常生活を送れます。まずは専門医による診断を受け、適切な治療を受けることが重要です。
この記事では、片頭痛の治療や受診すべき診療科に関する内容をお伝えします。これらを知っておくだけでも受診前の不安の軽減になるため、ぜひご活用ください。
片頭痛(偏頭痛)の基礎知識
この章では、片頭痛の原因や前兆、頭痛の種類について詳しく解説します。
片頭痛の基礎知識がわかっていると、治療に対する理解も深まります。
原因やメカニズム
片頭痛の原因は明らかにされていません。
ただし片頭痛時に「頭の血管が広がる」「顔面にある三叉神経が刺激される」ことが頭痛に影響しているとわかってきました。
たとえば、過度なストレスから解放された瞬間に頭の血管が広がります。そのため「重要なプレゼンテーション後」や「大切な試験が終わり安心した瞬間」などは注意が必要です。
また、血管が広がるタイミングで三叉神経が刺激されて、脳の三叉神経核で痛みとして認識されて片頭痛が発症します。
その他にも遺伝性や性別など原因はさまざまです。詳しく知りたい方は「片頭痛(偏頭痛)の4つの原因と疑われる症状をチェックリストで解説」で解説しているので、ぜひご覧ください。
片頭痛特有の前兆
片頭痛特有の前兆として「閃輝暗点(せんきあんてん)」があります。
閃輝暗点(※)とは視界の中にギザギザ・キラキラした光が現れるとともに、一部の視野が暗くなる症状です。何らかが原因で後頭部の血流が悪化して、視覚異常が生じます。
片頭痛が発症する直前もしくは同時に起こり、他の頭痛では見られない片頭痛特有の前兆として知られています。
頭痛の種類
頭痛の種類は主に以下の3つに分類されます。
- 一次頭痛
- 二次頭痛
- その他
一次頭痛とは脳に異常はなく、命にかかわらない頭痛です。ただし、重症化すると日常生活に支障をきたすため、適切な治療で症状をコントロールしていく必要があります。
代表的な一次頭痛は以下のとおりです。
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
- 群発頭痛
- 慢性片頭痛
二次頭痛とは何らかが原因で脳に異常が生じた際に出現する頭痛です。緊急性が高く、早期に治療をしないと命にかかわります。
代表的な二次頭痛は以下のとおりです。
- くも膜下出血
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 慢性硬膜下血腫
- 髄膜炎・脳炎
二次頭痛の他にも「薬物乱用性頭痛」や「熱中症や風邪による頭痛」があります。いずれにしても専門医による診断と適切な治療を受けなければ、症状の改善は難しいという点を知っておきましょう。
なお、片頭痛の種類と特徴については「【危険】片頭痛(偏頭痛)の種類と特徴|他の頭痛との見分け方」の記事で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
片頭痛(偏頭痛)の3つの治療
片頭痛の治療は主に以下の3つに分類されます。
- 治療①:頭痛の経過記録
- 治療②:薬物療法
- 治療③:生活改善
具体的な治療内容を知っておけば、安心して受診できます。
治療①:頭痛の経過記録
頭痛の原因を探るために、まずは頭痛の傾向を知るのが大切です。また、頭痛記録(頭痛ダイアリー)をつけておくと、適切な診断をしてもらうための情報元になります。
具体的に以下の内容を意識して記録すると良いでしょう。
- 頭痛が起こった日時や持続時間
- 痛みの種類(脈打つ、目の奥が締め付けられるなど)
- 発症時に過剰反応した刺激(光、音、ニオイなど)
- 頭痛以外の症状(吐き気、気分不良など)
記録方法がわからない方は、日本頭痛学会の公式ホームページからダウンロードできるため、ぜひご活用ください。
治療②:薬物療法|治療薬 一覧あり
薬物療法は「急性期治療」と「予防治療」に分類されます。
では、それぞれの時期に行われる具体的な薬物療法を見ていきましょう。
急性期治療
急性期治療では主に以下の薬剤が使われます。
薬剤 | 効果 | 具体的な薬剤名 |
鎮痛薬・抗炎症薬 (アセトアミノフェン・NSAIDs)(※1・2) |
痛みが伝わる過程を阻害して痛みを感じにくくして、片頭痛を和らげます。 | ・カロナール ・ロキソプロフェンなど |
血管収縮薬 (トリプタン系薬・エルゴタミン製剤)(※3) |
血管壁の細胞にカルシウムが入るのを阻害することで血管収縮を促し、片頭痛を和らげます。 | ・エルゴタミン ・イミグランなど |
制吐薬(※4) | 中枢神経系に作用して、片頭痛に伴う吐き気や気分不良を抑えます。 | ・メトプロロール ・ドンペリドンなど |
鎮痛薬は早めに使うほど効果が出ます。ただし過剰内服になると薬剤乱用性頭痛(痛みを感じやすくなる)を発症するため、医師の処方量を守り薬剤療法を進めていきましょう。
- 参考資料
- ※1 一般社団法人 日本頭痛学会"アセトアミノフェンは片頭痛治療に有効か"(参照2023/7/24)
- ※2 一般社団法人 日本頭痛学会"NSAIDs は片頭痛治療に有効か"(参照2023/7/24)
- ※3 一般社団法人 日本頭痛学会"Ca 拮抗薬(塩酸ロメリジン)は片頭痛の予防に有効か"(参照2023/7/24)
- ※4 一般社団法人 日本頭痛学会"急性期治療において制吐薬の使用は有用か"(参照2023/7/24)
予防治療
急性期を脱した後は、症状が収まった状態を保つ必要があります。そのためには、予防薬が必要になるかもしれません。
予防治療では主に以下の薬剤が使われます。
薬剤 | 効果 | 具体的な薬剤名 |
抗てんかん剤(※1) | 神経細胞の興奮を抑えて片頭痛を和らげます。 | バルプロ酸 |
抗うつ剤(※2) | 脳内の神経伝達物質であるセロトニンの分泌を促し、血管収縮させて片頭痛の発症を予防します。 | アミトリプチリン |
漢方薬(※3) | 冷えによる三叉神経への刺激を予防して、片頭痛の発症を予防します。 | 呉茱萸湯 |
また、予防薬とともにトリガー(引き金)を避けるための生活改善も合わせて実施できると、より効果を実感できます。生活改善の具体的な方法については次章で解説するので、ぜひご覧ください。
- 参考資料
- ※1 一般社団法人 日本頭痛学会'抗てんかん薬(バルプロ酸)は片頭痛の予防に有効か"(参照2023/7/24)
- ※2 一般社団法人 日本頭痛学会"抗うつ薬(アミトリプチリン)は片頭痛の予防に有効か"(参照2023/7/24)
- ※3 日本神経学会・日本頭痛学会 監修"慢性頭痛の診療ガイドライン 2013"(参照2023/7/24)
治療③:生活改善
片頭痛の治療は薬物療法だけでは不十分です。
なぜなら、日頃の生活習慣と片頭痛は密接に関わっているからです。片頭痛を引き起こしやすい生活習慣を見直して改善できれば、薬物療法の効果も高められます。
具体的な生活改善として、以下の3つが挙げられます。
- 生活習慣の改善
- 食生活の改善
- ストレスを解消する
では、1つずつ見ていきましょう。
生活習慣の改善
生活習慣が崩れると自律神経が乱れて、片頭痛体質になります。
以下の生活習慣は自律神経を乱す原因になるため注意しましょう。
- 不規則な生活
- 慢性的な睡眠不足や昼夜逆転
- 過度なストレス
- 食生活の不摂生
生活リズムを整えるために、朝日光を浴びると効果的です。体内時計がリセットされ、朝目覚めて夜眠くなるリズムを作れます。
また、運動習慣をつけるのがオススメです。適度な運動はストレス解消や片頭痛の原因になる首や肩の筋肉の凝りをほぐしてくれ、夜間の睡眠を促します。
食生活の改善
食生活を改善することで片頭痛を予防できる人もいます。
たとえば、ビタミンB2やマグネシウムが有効(※1)です。ビタミンB2は体内の調子を整え、マグネシウムは血管攣縮(れんしゅく:けいれん性の収縮のこと)効果があります。
ビタミンB2は豆類、乳類、マグネシウムは魚介類・藻類から摂取できます。これらの食品を食生活に取り入れるのが難しいなら、ドラッグストアで販売されているサプリメントを活用する方法も有効です。
また、反対に控えた方がよい食品もあります。
たとえば、赤ワインやチーズ、チョコレート(※2)などは片頭痛の方にはオススメしません。これらの食品には血管を広げる作用のあるポリフェノールが含まれており、片頭痛を誘発するからです。
バランスの良い食事を心がけながら、上記内容を意識した食生活の改善をしてみましょう。
- 参考資料
- ※1 一般社団法人 日本頭痛学会"その他の予防療法( Mg, ビタミン B2 , feverfew, NSAID s)は片頭痛治療に有効か"(参照2023/7/24)
- ※2 国立研究開発法人 国立がん研究センター"チョコレート摂取と脳卒中発症リスクとの関連"(参照2023/7/24)
ストレスを解消する
頭痛とストレスは密接な関係にあります。片頭痛を解消するためにストレスをため込まない習慣を持つことが重要なのです。
過剰なストレスがかかると神経伝達物質であるセロトニンの分泌が増えて、血管が収縮します。そして、収縮した血管が元に戻るタイミングで片頭痛になります。
また、ストレスを感じている最中は緊張型頭痛にもなりやすいため、百害あって一利なしです。ストレス解消としてオススメの方法は、以下になります。
- 適度な運動
- ストレスのかかりやすい環境を避ける
- 趣味など自分だけの時間に没頭する
自分なりのストレス解消方法を見つけて、片頭痛を予防できるようになりましょう。
片頭痛(偏頭痛)の方が受診すべき診療科と受診前にできること
片頭痛の治療を受けるなら専門の診療科を受診しましょう。
なぜなら、片頭痛は完治が難しく、長期的に付き合っていく必要のある症状だからです。そのためには、専門医の指導のもと必要な検査を受けて、適切な治療を受けなければいけません。
では、受診すべき診療科と受診前にできることについて解説します。
受診すべき診療科
片頭痛に悩む方が受診すべき診療科は、脳神経内科(神経内科)・外科もしくは頭痛を専門に扱う頭痛外来です。専門の診療科を受診できれば、必要な検査と適切な治療が受けられます。
片頭痛は完治しません。そのため、症状をコントロールしながら、うまく付き合っていく必要があります。受診先を検討中の方は、日本頭痛学会(※)の公式ホームページから各都道府県の認定頭痛専門医のいる病院を探せます。
受診前にできること
受診前に頭痛の傾向を把握しておくと、診断や治療をスムーズに行えます。
なぜなら、片頭痛の診断をする際に「発症するタイミングや持続時間」「症状の特徴」は重要な情報になるからです。
具体的な記録内容については「頭痛の経過記録」で解説した内容をもとに記録しておくと良いでしょう。
まとめ: 治療の選択肢を増やすために治験も検討しよう
片頭痛の治療は薬物療法と生活改善が基本です。ただし、同じ薬でも効果には個人差があります。薬物治療の効果が実感できず、新しい治療に挑戦したい方は、治験へ参加するのも選択肢の一つです。
治験なら新しい治療薬に出会える可能性もあります。とくに、治療を受けているにもかかわらず片頭痛が続く方は、治験への参加もご検討ください。