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片頭痛の予防

  1. セルフケア可能な片頭痛(偏頭痛)の9つの予防法
  2. 片頭痛(偏頭痛)の予防治療に使われる5つの薬剤
  3. 【最新治療】注射による片頭痛(偏頭痛)の予防療法
  4. まとめ:片頭痛の予防法は継続して初めて効果を発揮する

発症するタイミングが予測できない片頭痛に悩む方の不安やストレスは、計り知れません。片頭痛になる回数や時間を少しでも減らすために普段からできる予防法についても学んでいきましょう。

セルフケア可能な片頭痛(偏頭痛)の9つの予防法

片頭痛は薬剤療法以外にも日常生活のあらゆる場面で予防できます。そして、片頭痛の予防には、以下の3つが期待されます。

  • 発症回数と痛みの程度を下げる
  • 急性期治療薬の効き目を上げる
  • 日常生活の支障を最小限に止める

これらの効果が期待できる予防法を9つ解説します。今すぐ始められる内容を中心に紹介しているので、ぜひ今日からご活用ください。

予防法①:規則正しい生活

規則正しい生活を心がけると、片頭痛の発症率を下げられます。
なぜなら、自律神経が整い、ホルモンバランスが乱れにくくなるからです。
とくに女性は月経周期に伴い分泌されるエストロゲンの影響で、片頭痛になりやすい傾向にあります。自律神経が乱れるとエストロゲンの分泌量をコントロールできず、片頭痛を引き起こします。
規則正しい生活を送るために、以下を意識すると良いでしょう。

  • 仕事・休みに関係なく起床時間を統一する
  • 起床時に日光を浴びる

起床時に日光を浴びると体内時計がリセットされ、神経伝達物質であるセロトニン(※)が分泌されてリラックスした状態で過ごせます。また、日中セロトニンが十分分泌されれば、夜間の睡眠を促せます。

予防法②:十分な睡眠

十分な睡眠時間を確保することも片頭痛の予防に効果的です。睡眠中は疲労やストレスを解消する大切な時間であり、生命活動をしていく上で欠かせません。
日常生活でできる具体的な予防法は、以下のとおりです。

  • 入眠2時間前からはスマホやパソコンなどのブルーライトは避ける
  • 日中に軽い運動やストレッチをして適度に疲れる
  • 毎日決まった時間に布団に入る

ブルーライト(※1・2)とは、目や体へ強い影響を及ぼす可視光線です。入眠前にブルーライトを見ると強い刺激から覚醒状態になり、眠れなくなります。
また、片頭痛を誘発する首や肩の凝りの原因にもなるため、少なくとも睡眠2時間前からはスマホやパソコンは控えましょう。

予防法③:刺激の少ない生活環境に調整

外的な刺激に過剰反応しやすい片頭痛の方にとって、刺激の少ない生活環境に整えることも予防法の一つです。
日常生活でできる具体的な予防法は、以下のとおりです。

  • 日差しが強いところではサングラスを着用する
  • 人ごみや騒音を避ける
  • ニオイが強い場所や食べ物は控える

片頭痛の症状が出た際は、暗くて静かな部屋で楽になるまで体を休めましょう。また、人ごみや騒音の大きい場所が刺激になる場合もあるため、心配な人は医師に相談して予防薬を処方してもらうと安心です。

予防法④:食事・サプリメントの工夫

食事・サプリメントをうまく活用できれば、片頭痛になりにくい体作りができます。とくにビタミンB2やマグネシウム(※1)の摂取がオススメです。
ビタミンB2は体内の調子を整え、マグネシウムは血管攣縮(れんしゅく:けいれん性の収縮のこと)の予防効果が期待できます。また、ビタミンB2は豆類、乳類、マグネシウムは魚介類・藻類に多く含まれるため、食事に取り入れることも可能です。
一方、赤ワインやチーズ、チョコレートなどは控えましょう。これらの食品にはポリフェノール(※2)と呼ばれる物質が多く含まれ、片頭痛の原因である血管拡張を促す作用があるからです。摂取後の片頭痛の有無で適正量を見極めることも重要です。

予防法⑤:低血糖の予防

片頭痛の発症と空腹による低血糖は深いかかわりがあります。低血糖時(※)は血管が広がりやすく、片頭痛を誘発します。
日常生活でできる低血糖予防は、以下のとおりです。

  • 規則正しい食事時間にする
  • 3食食べる
  • 極端な糖質制限ダイエットをしない

激しい運動や過度な疲労がたまった後も低血糖になりやすいため、注意しましょう。とくに糖尿病もしくは糖尿病予備軍の方はインスリンの調整不良のため、低血糖になりやすい傾向にあります。
仕事や外出で規則正しい時間に食事ができないなら、ポケットやカバンにブドウ糖を含む食品を忍ばせておくと安心でしょう。

予防法⑥:ストレス解消

ストレス解消も片頭痛の予防に有効です。
過度なストレスは脳の調整不良となり、痛みのコントロールができなくなるからです。神経伝達物質であるセロトニンの分泌が促され、片頭痛を誘発します。
日常生活でできる具体的な予防法は、以下のとおりです。

  • 趣味や適度な運動でストレス解消をする
  • ストレスを感じにくい生活環境に整える

ストレス解消法は人それぞれ違います。疲れがたまる前に一息休憩を入れることや、心にゆとりを持って行動するなど、ご自身に合ったストレス対策を考えてみましょう。

予防法⑦:月経周期の把握

女性の場合は月経中(生理中)に片頭痛を起こしやすい傾向にあります。
排卵前と月経直後にエストロゲンの分泌量が変化すると、片頭痛を起こしやすくなるからです。
片頭痛の有病率は「8.4%」であり、女性は男性に比べて「約3〜4倍」です。また、月経中の女性は痛みを感じやすい傾向にあります。
日常生活でできる具体的な予防法は、以下のとおりです。

  • 月経周期と片頭痛の傾向を把握する
  • ピルの服用は控える
  • 生理不順(があれば)の原因を探る

月経周期も踏まえながら片頭痛の予防をしなければいけない女性は、男性に比べて負担が大きいでしょう。まずは月経周期と片頭痛の傾向について把握して、自分に合った予防を考えると良いでしょう。

予防法⑧:頭痛ダイアリーをつけて自分の傾向を把握

頭痛ダイアリーをつけておくと、自分の傾向を把握できます。日本頭痛協会の公式ホームページ(※)から頭痛ダイアリーの様式をダウンロードできます。
また、頭痛ダイアリーがあれば、医師に片頭痛の傾向を分析してもらえ、状態に合わせた片頭痛対策や予防法を考えてもらえます。
片頭痛を発症するトリガー(引き金)や状況は人それぞれ違います。効果的な予防法を考えるために、面倒に思っても記録してみましょう。

予防法⑨:予防薬の使用

今ある片頭痛を和らげるための急性期治療が終わった方は、医師に相談して予防薬の検討をしてもらいましょう。
予防薬は以下の目的で使用されます。

  • 発症回数や痛みを減らす
  • 急性期治療薬を減らす
  • 前兆の改善

予防薬で片頭痛の発症頻度や痛みを和らげられれば、日常生活の支障を減らせるとともに、薬物乱用性頭痛の予防もできます。予防薬の種類と特徴については、次章で詳しく解説します。

片頭痛(偏頭痛)の予防治療に使われる5つの薬剤

片頭痛の予防治療に用いられる代表的な薬剤は、以下の5つです。

  • 薬剤①:カルシウム拮抗剤
  • 薬剤②:抗うつ剤
  • 薬剤③:抗けいれん剤
  • 薬剤④:β-ブロッカー
  • 薬剤⑤:漢方製剤

では、各薬剤の特徴と期待される効果について見ていきましょう。

薬剤①:カルシウム拮抗剤

カルシウム拮抗剤(※1・2)とは血管壁の細胞にカルシウムが入るのを阻害して、血管の収縮を穏やかにする薬です。
片頭痛は血管が広がる際に発症します。そのため、カルシウム拮抗剤を服用して血管の収縮を穏やかにして、脳血管の拡張時と収縮時の圧力差を少なくして、発作時の症状を軽くします。
トリプタン系薬・エルゴタミン製剤などがあり、具体的な薬剤として以下が挙げられます。

    エルゴタミン
  • イミグラン

全身の抹消血管への影響が少なく、めまいなどの副作用を起こしにくいため、初めて内服する方も安心です。

薬剤②:抗うつ剤

抗うつ剤(※)とは脳内の神経伝達物質であるセロトニンの分泌を促して片頭痛を予防する薬です。
セロトニンはストレス解消ホルモンであり、「全身のリラックス効果」「血管を収縮する作用」がある神経伝達物質です。血管が広がる際に発症する片頭痛の予防薬としても有効性が確認されています。
具体的な薬剤として、以下が挙げられます。

  • アミトリプチリン
  • フルボキサミン
  • パロキセチン
  • デュロキセチンなど

ただし、作用が強い薬なので眠気や口渇感などの副作用が現れる方も少なくありません。車の運転や集中力が求められる作業前は、服用を控え、入眠前や夜間の落ち着いた時間に服用しましょう。

薬剤③:抗けいれん剤

抗けいれん剤(※)とは神経細胞の興奮を抑え、片頭痛の発症を予防できる薬です。
具体的な薬剤として以下が挙げられます。

  • バルプロ酸(デパケン)トピラマート

ただし、両薬とも同等の有用性が認められているものの、国内においてはバルプロ酸の方だけが保険適応です。
また、妊娠中の方には使用が禁止されているので、処方時に妊娠の可能性があれば医師に相談して代用薬の検討をしてもらいましょう。

薬剤④:β-ブロッカー

β-ブロッカー(※1)とはβ受容体と呼ばれる部分を阻害して、心筋に伝わる交感神経の刺激を遮断する薬です。血管の拡張時・収縮時の圧力差が減り、片頭痛の発症を予防する効果が期待できます。
具体的な薬剤として、以下が挙げられます。

  • プロプラノロール
  • メトプロロール
  • アテノロール
  • ナドロールなど

欧米ではプロプラノロールが片頭痛予防の第1選択薬(※2)として用いられるほどメジャーな薬です。ただし、心不全や喘(ぜんそく)がある方への使用が禁止されているので、注意しましょう。

薬剤⑤:漢方製剤

冷え予防に効果のある漢方製剤(※)も片頭痛予防薬として用いられます。とくに顔の冷えは、三叉神経を刺激して片頭痛を引き起こす原因です。
「冷たい水で顔を洗う」「歯磨きをする」などで片頭痛を発症する方も少なくありません。中には化粧をするだけでも片頭痛になると悩まされるケースもあります。
具体的な薬剤として、以下が挙げられます。

  • 呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
  • 桂枝人参湯(けいしにんじんとう)
  • 釣藤散(ちょうとうさん)
  • 葛根湯(かっこんとう)
  • 五苓散(ごれいさん)

漢方製剤には即効性はありません。しかし、長期的に服用できれば体内環境の調子を整えていけます。また、薬物乱用性頭痛のリスクを下げるための予防薬として導入される場合もあります。

【最新治療】注射による片頭痛(偏頭痛)の予防療法

内服薬による予防効果が低い場合、注射薬(※)の導入による治療を行うことがあります。
近年の研究では顔にある三叉神経から脳の表面の膜(硬膜)CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が放出され、炎症と血管拡張が促されて片頭痛が発症するとわかってきました。
使用基準を満たせば保険適応で導入できるため、内服薬による予防効果が実感できない方は医師に相談してみましょう。

まとめ: 片頭痛の予防法は継続して初めて効果を発揮する

絶対的かつ即効性のある予防法はありません。そのため、ご自身に合った予防法を模索しつつ、継続するのがポイントです。たとえば、薬剤治療における予防薬も服用の継続が大切です。
また、片頭痛の原因は明らかにされておらず、ご自身と同じ症状で悩む人も多くいます。治験に参加すれば、ご自身と同じ症状に悩む人を救うことに携われます。ご興味があれば、治験についてもご検討ください。

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