- 片頭痛(偏頭痛)の症状|具体的な内容で解説
- 片頭痛(偏頭痛)の原因と前兆
- 片頭痛(偏頭痛)のトリガー(引き金)因子
- 【セルフケア可能】片頭痛(偏頭痛)の予防法と対処法
- 片頭痛(偏頭痛)に関するQ&A
- まとめ: 片頭痛(偏頭痛)の症状があれば受診しましょう
いつ発症するか予測のつかない片頭痛に悩む方も多いのではないでしょうか。片頭痛だから休めば治ると放置するのは厳禁です。
なぜ片頭痛の放置が厳禁なのかに加えて、症状やトリガーについてこの記事で理解しましょう。また、効果的な予防・対処法も解説するため、ぜひご活用ください。
片頭痛(偏頭痛)の症状|具体的な内容で解説
この章では、片頭痛の症状について発症頻度や持続時間、他の頭痛との比較などさまざまな角度から解説します。片頭痛を疑う症状がある方は、ご自身の状態と照らし合わせて読むと片頭痛への理解が深まります。では、詳しく見ていきましょう。
片頭痛の症状
片頭痛に悩まされる方の約4割は両側性の頭痛を経験しています(※)。
片頭痛の代表的な症状は、以下のとおりです。
- 頭の片側だけ痛む(両側の場合もある)
- ドクドクとした痛み(拍動するような)
- 動くと症状は強くなる
- 気分不良や吐く
- 光や音刺激に過剰反応する
- 発症直前にキラキラ・ギザギザの光が見える(閃輝暗点)
目の周囲や奥で心臓が拍動するようにドクドクとした痛みを感じるとともに、気分不良や吐くなどの症状を伴う場合も少なくありません。また、光や音などの外的刺激へ過敏になり、生活に支障が出る場合もあります。
人それぞれ症状の程度や種類は異なりますが、これらの症状に心当たりがあれば片頭痛の可能性が疑われるでしょう。
発症頻度と持続時間
発作の頻度は人それぞれですが、一般的には数日から数か月に1回と考えられています。また、1回あたりの持続時間は「約4〜72時間(※)」であり、発症後「30分〜1時間」でピークを迎えます。
男女別にみると、女性は男性よりも発作頻度が高く、持続時間も長いことがわかっています。
基本的には男女で痛みの差はありません。しかし、月経中(生理中)は痛みへの感度が上がることや薬の効きが悪いため、片頭痛が及ぼす影響は女性の方が大きいと言えます。
性別や年齢による違い
日本人全体の有病率は「約8.4%」であり、約12人に1人は片頭痛持ちの計算です。そして、男女別で発症率(※1)をみると、男性は「3.6%」、女性は「12.9%」であり、女性の方が「約3〜4倍」高いとわかります。
10歳未満の男女では有病率に違いはありません。しかし、初潮を迎える12歳前後で女性が多くなります。この他にも海外のデータ(※2)によると、1年間の片頭痛有病率は11.7%(女性17.1%、男性5.6%)であり、中年でピークを迎えて、60歳以上の高齢者では下がります。
片頭痛持ち全体の「31.3%」が月に3回以上の発作を起こし、「53.7%」 が重症もしくは横になって休まなければいけないという報告もあるほど日常生活に支障をきたす症状です。
- 参考資料
- ※1 頭痛OnLine 総監修:社会医療法人 寿会 富永病院 副院長(脳神経内科部長・頭痛センター長)/富永クリニック 院長 竹島多賀夫先生"片頭痛"(参照2023/7/24)
- ※2 米国政府公式ウェブサイト National Library of Medicine"Migraine prevalence, disease burden, and the need for preventive therapy"(参照2023/7/24)
慢性片頭痛について
慢性片頭痛とは、薬物乱用性頭痛(薬を使いすぎて症状が悪化した状態)を除いて「月に15日以上」かつ「3か月ほど頭痛が続く」症状です。
「数か月前はたまに頭痛になっていたけど、最近は連日頭痛に悩まされている」なら、慢性片頭痛の可能性があります。
著しく生活の質(QOL)が低下して、極度の不安からうつ病などの気分障害を合併する場合も少なくありません。適切な治療を行わないと重症化して日常生活を営めない場合もあります。
他の頭痛との症状比較
頭痛は「一次頭痛(※1)」「二次頭痛(※2)」に分類されます。
一次頭痛とは「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」を総称した頭痛であり、命に別状はありません。しかし、日常生活のあらゆる状況が引き金(トリガー)となるため、日常生活に影響を及ぼしやすい頭痛として知られています。
二次頭痛とは一次頭痛の有病者の有無にかかわらず、突発的に強い頭痛が発症する頭痛です。くも膜下出血や脳出血などが原因であり、早期に治療を開始しないと命に関わります。
片頭痛とその他の頭痛の比較は、以下の表をご覧ください。
頭痛の種類(※1・2)
一次頭痛 | 片頭痛 | ・頭の片側だけの頭痛 ・動くと症状が強くなり、特有の前兆として閃輝暗点がある ・光や音などの外的な刺激に過敏反応し、吐き気を伴う |
緊張型頭痛 | ・後頭部から両側がじんわり痛む ・体を動かしても症状の強弱は変わらない ・首や肩の凝りが原因になる場合が多く、吐き気などは伴わない |
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群発頭痛 | ・眼周囲~前頭部、側頭部にかけての激しい頭痛 ・眼の充血や流涙、鼻汁や鼻閉、縮瞳と眼瞼下垂が伴う |
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二次頭痛 | くも膜下出血 | ・これまでに感じたことのない激しい頭痛を突然感じる ・吐き気や嘔吐、意識消失などを伴う |
脳出血 | ・脳血管が切れて発症する頭痛 ・出血量や出血場所により症状はさまざま |
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脳腫瘍 | ・頭蓋内で成長した脳腫瘍が脳を圧迫することで発症する頭痛 ・頭痛症状は悪化と改善を繰り返す |
発作時に頭痛の種類を見分けるのは難しいため、精査も含めて受診をオススメします。
片頭痛(偏頭痛)の原因と前兆
片頭痛の原因は解明されていません。ただし、ある程度の要因や前兆についてはわかってきました。
片頭痛の原因や前兆がわかれば、発症や重症化を予防できます。片頭痛による苦痛を少しでも減らすために、ぜひご覧ください。
片頭痛の原因
片頭痛の原因は明らかにされていません。ただし、以下の5つが影響しているのではないかと考えられています。
- 脳血管の拡張
- 三叉神経への刺激
- 遺伝的要因
- 生活環境の刺激
- 性別
片頭痛は脳血管が拡張するタイミングで発症します。たとえば「大切なプレゼンテーションを終えた後」や「試験に合格したと分かった時」などは注意です。
他にも顔の血管を取り巻くように分布する三叉神経に炎症が起こり、脳の三叉神経核が刺激されると片頭痛を引き起こします。
片頭痛の原因を詳しく知りたい方は「片頭痛(偏頭痛)の5つの原因と疑われる症状をチェックリストで解説」で解説しているので、ぜひご覧ください。
片頭痛の前兆
前兆とは、片頭痛になる直前もしくは発症と同時に現れる症状です。片頭痛持ちの方の「約20〜30%」が前兆を感じると考えられており、代表的な前兆として「閃輝暗点(せんきあんてん)」があります。
閃輝暗点とはギザギザ・キラキラした光が見え、視界の一部が見えにくくなる症状です。視覚異常の範囲が徐々に広がり、その後頭痛に移行します。
他にも、生あくびが出る眠気や言葉が出にくくなるなどの前兆が現れる方もいます。症状は人それぞれであるため、まずはご自身の傾向から把握してみましょう。
片頭痛(偏頭痛)のトリガー(引き金)因子
片頭痛が発症するトリガー(引き金)は明らかにされていません。ただし、自律神経やホルモンバランスを整える視床下部がトリガーによって刺激されることで、片頭痛が発症するとわかってきました。
具体的なトリガー(引き金)として、以下が挙げられます。
引き金(トリガー) | 内容 |
ストレス | 日常・社会生活における過度なストレスにより自律神経が乱れ、ストレスからの解放時に血管が広がったりした際に発症 |
ホルモンバランス | 月経(生理)や更年期障害・低容量ピルの使用などでエストロゲンのバランスが崩れて発症 |
飲食 | ポリフェノールが含まれる赤ワインやチョコレートの摂取で血管が広がり発症 |
活動と休息のバランス | 睡眠の質が低下して自律神経が乱れて発症 |
感覚刺激 | 光や音、ニオイなど日常生活のあらゆる外的刺激に過剰反応して発症 |
天候 | 梅雨の時期など天候や気圧の変化により発症 |
これらの刺激は一例であり、人それぞれトリガー(引き金)になる刺激は異なります。
【セルフケア可能】片頭痛(偏頭痛)の予防法と対処法
片頭痛とうまく付き合っていくためには、予防と発症後の適切な対処が重要です。
そこでこの章では「片頭痛を起こさないための予防法」「片頭痛が起こってしまった時の対処法」について解説します。
ご自身の症状と照らし合わせながら、できそうな予防・対処法から取り入れてみましょう。
片頭痛を起こさないための予防法
自律神経を乱すような生活習慣を改善すると、片頭痛を予防できます。
たとえば、以下の生活習慣を改善すると予防効果が期待できるでしょう。
- 規則正しい生活
- 十分な睡眠
- バランスの取れた食生活
- 適度な運動
- ストレスをためない
この他にもマグネシウムが不足すると、片頭痛になりやすくなります。加えて、ビタミンB2(※)は片頭痛の予防効果があるため、これらの栄養素はサプリメントで補うのも選択肢の一つです。
仕事などで規則正しい生活や十分な睡眠が取れない方は、休める時に休むなどご自身の体をいたわることも必要です。
片頭痛が起こってしまった時の対処法
片頭痛になってからでも対処の仕方によっては症状を軽くできます。
具体的な対処法は以下のとおりです。
- 暗い、静かな場所で横になる
- 光や音、ニオイなどの刺激が少ない暗く静かな部屋に移動すると症状の悪化を防げる
- 患部を冷やす
- 患部を冷やし周辺血管を収縮させると症状を和らげられる
- 休息をとる
- 十分な睡眠を取り、体を休ませて自律神経を整え、症状を和らげられる
- カフェインを摂取する
- 血管収縮効果のあるカフェインを摂取すると症状を和らげられる
- 鎮痛薬を服用する
- 病院で処方もしくは市販の痛み止めで症状を軽くする
そのため、今回紹介した医学的根拠のある方法に加えて、自分なりの対処法を考えておくと良いでしょう。
片頭痛(偏頭痛)に関するQ&A
この章では、片頭痛の症状に関するよくある3つの質問について詳しく解説します。
- 質問①:片頭痛と偏頭痛の違いを教えてください
- 質問②:片頭痛は遺伝しますか?
- 質問③:常習的に痛み止めを飲むのは危険ですか?
では、詳しく解説します。
質問①:片頭痛と偏頭痛の違いを教えてください
片頭痛と偏頭痛に意味の違いはありません。ただし、学術的(※)には「片頭痛」が正しいため、論文もガイドラインも「片頭痛」の表記が用いられています。
質問②:片頭痛は遺伝しますか?
片頭痛は家系内発症例が多く、遺伝が関連しているのは確実(※1)です。ただし、片頭痛の原因となる確実な遺伝子は見つかっておらず、複数の遺伝子が複雑に関係して発症すると考えられています。
そして、片頭痛に悩まされる「約75%(※2)」の方は遺伝性です。とくに親や兄弟に片頭痛持ちがいると、片頭痛を発症するリスクが高いとされています。
- 参考資料
- ※1 厚生労働省委託事業 公益財団法人 日本医療機能評価機構 "これで治す最先端の頭痛治療 「慢性頭痛の診療ガイドライン」市民版"(参照2023/7/24)
- ※2 脳神経外科 山本クリニック"片頭痛 Q&A"(参照2023/7/24)
質問③:痛み止めを習慣的に飲むのはダメですか?
薬剤乱用性頭痛のリスクを考えて、痛み止めを習慣的に飲むのは控えましょう。
薬剤乱用性頭痛(※)とは、痛み止めを習慣的に内服することで発症する頭痛です。頭痛になるかもしれないという不安から必要以上に痛み止めを内服し、薬が効きにくくなり、症状を強く感じます。
また、習慣的に痛み止めを使う(週に2〜3回以上)と胃や腎臓へも負担になるため、月に4〜5回程度に控えなければいけません。とくに非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、消化器症状や腎機能低下になりやすいため注意が必要です。
まとめ: 片頭痛(偏頭痛)の症状があれば受診しましょう
頭の片側だけがドクドクと痛む頭痛や閃輝暗点などの前兆があれば、片頭痛が疑われます。そして、ご自身の症状や前兆の傾向を理解できれば、症状をコントロールできます。
まず医療機関で確定診断をしてもらいましょう。確定診断が出れば、ご自身の状況に合わせた適切な治療を受けられ、日常生活への支障を最小限に抑えられます。
この記事が片頭痛症状への理解を深め、受診の必要性について考えるきっかけになれば嬉しいです。