RSウイルスは呼吸器系ウイルスの一種で、主に乳幼児や高齢者に感染しやすい病原体です。そして、RSウイルスについて詳しく分かれば、適切な予防対策が立てられます。
RSウイルス感染症とは?
近年、RSウイルス感染症は初夏に増加が目立ち、夏にピークを迎える傾向にあります。2歳までにほぼ100%の子どもが感染すると考えられており、強い咳や高熱を伴う症状が特徴的です。
この感染症は感染力が非常に強く、施設内での集団感染が起こりやすい特徴があります。特に、乳児や高齢者、基礎疾患がある方がRSウイルス感染症になると重症化しやすいことにも注意が必要です。
原因であるRSウイルスの特徴は?
RSウイルスとは、呼吸感染症の原因となるウイルスの一種です。このウイルスは呼吸器系の粘膜に感染し、炎症を引き起こします。その結果、上気道炎、気管支炎、肺炎などの呼吸器感染症の原因となります。
また、乾燥した環境ではRSウイルスが活性化する傾向にあります。
RSウイルス感染症の発生状況
RSウイルス感染症の発生状況を2018〜2024年の間で見ると、20〜37週(5〜8月)の暑い時期に感染拡大していることが分かります。つまり、夏から増加傾向となり秋にピークアウトする傾向にあります。
RSウイルス感染症への適切な対策を行うためには、感染症予防の観点から夏場でも予防対策を継続することが重要です。夏に感染対策を行う場合は、夏用の通気性のあるマスクなどの活用がおすすめです。
RSウイルスの特徴に関するよくある質問
質問①:RSウイルスの流行時期が変化している原因は?
従来、RSウイルスの流行は秋から冬にかけて見られましたが、近年は夏から流行が始まる傾向にあります。この変化の原因として、以下の2点が可能性として考えられます。
- 気候変動による気温上昇や湿度変化などの環境要因
- 海外からの渡航者の増加
RSウイルスは気候変動にも変化・適応できると考えられます。また、インバウンド政策による渡航者数の増加によりRSウイルス感染症患者の数が増加したことも研究結果として出ています。
質問②:RSウイルスに有効な治療薬がない理由は?
RSウイルスに限らずウイルス全般において治療薬が作られない理由は、以下の2点です。
- ウイルスの構造がシンプルで標的にすべき特徴が少ないため
- 人体に侵入し、細胞の機能を利用して感染拡大をするため
ウイルスは人体に侵入して増加する性質があるため、人体に影響のない薬の開発が難しいとされています。これらの理由からウイルス全般における治療薬の開発が難しいのです。
そして、RSウイルスの特効薬の開発も例外ではありません。そのため、現在のところ、対症療法で症状を和らげることが治療のメインです。感染対策として事前に予防接種を行うという方法があります。その場合、感染が流行する時期よりも早めに接種しておく必要があります。
質問③:RSウイルスの感染が繰り返される原因は?
RSウイルスに対する終生免疫は獲得されないため、何度でも再感染する可能性があります。そのため、同じウイルスに繰り返し感染することがあります。
しかし、何度も感染を繰り返す中で徐々に抗体が獲得されていき、感染しなくなったり、感染したとしても重症化しづらくなったりするという特徴があります。
つまり、RSウイルスに対する完全な免疫は得られませんが、感染を繰り返すことで免疫系が強化され、ウイルスに対する反応が改善されていきます。
まとめ:RSウイルスの原因を知って予防対策を!
RSウイルス感染症の原因は、RSウイルスと呼ばれる呼吸器感染を引き起こすウイルスです。このウイルスは近年夏をピークに流行する傾向にあり、2歳までにほぼ100%の子どもが感染すると考えられています。
何度も感染を繰り返す中で徐々に抗体が獲得されていき、感染しなくなったり、感染したとしても重症化しづらくなったりするため、初めて感染する乳児では症状が強く出る傾向にあります。
乳児や高齢者、基礎疾患のある方では上気道炎、気管支炎、肺炎などの症状が現れるなどの重症化リスクが高いことも分かっています。一方でウイルスに対する治療薬は開発が難しいため、今のところ治療法は確立されておらず、対症療法がメインとなります。