RSウイルス感染症には特効薬がなく、現在のところ対症療法が治療のメインです。そのため、子どもがRSウイルスに感染したらと不安を抱えている親御さんも多いのではないでしょうか。
RSウイルス感染症に対する特効薬はない現状
RSウイルス感染症についての治療法についてですが、現在のところ特効薬は開発されていません。そのため、基本的には症状を和らげるための対症療法が行われます。
例えば、酸素投与や点滴、呼吸管理などが挙げられます。乳幼児や免疫不全のある方は、RSウイルス感染症をきっかけに重篤な状態になることも考えられるため、早期の診断と適切な対症療法が重要です。
RSウイルス感染症における治療の基本は対症療法
解熱鎮痛剤や水分補給など
RSウイルス感染症は、発熱や体の痛み、頭痛などの症状を引き起こします。これらの症状は患者の体力を奪い、苦痛な時間を長引かせる原因となります。そこで、これらの症状を和らげるためにも、解熱鎮痛剤が使用されます。
解熱鎮痛剤は発熱を抑え、体の痛みや頭痛を和らげます。症状が和らぐと、休息をとりやすくなります。
また、RSウイルス感染症による高熱や呼吸器症状によって、患者さんは水分を失いやすくなるため、適切な水分補給が非常に重要です。特に、乳幼児や高齢者は脱水症状になりやすいため、こうした患者さんには積極的な水分補給が必要です。
重症化した場合は酸素療法や人工呼吸器の使用
RSウイルスに感染した場合、特に乳幼児や高齢者などのリスクが高い患者さんは、症状が重症化しやすいことがあります。重症化した場合、酸素療法や人工呼吸器の使用により、呼吸管理が必要になります。
例えば、肺の炎症や痰の増加によって酸素取り込みが困難になることがあり、そうなると酸素療法(体内に十分な酸素を取り込めない人に対して、酸素を補給する治療法)が必要になります。また、重症化して自発呼吸が難しくなる(呼吸困難)と、人工呼吸器による強制換気で回復を目指すことも考慮されるでしょう。
これらの治療は、患者の呼吸機能を支援し、酸素供給を確保するために欠かせないものである一方、強い苦痛を伴います。そのため、軽症のうちに早めに対処することが重要と言えます。
RSウイルス治療における留意点
細菌感染の合併症に注意
RSウイルス感染症では、細菌感染を合併することがあります。主な細菌感染として、以下の3つがあります。
- 細菌性肺炎:細菌が肺胞に侵入して炎症を起こす呼吸器疾患
- 中耳炎:中耳に細菌が感染して、炎症を起こす耳鼻科疾患
- 副鼻腔炎:副鼻腔の粘膜に細菌が感染して、炎症を起こす耳鼻科疾患
細菌感染が加わると発熱が続いたり、痰が増えたり、重症化する危険性が高まります。そのため、注射や内服薬などの薬剤治療が必要になることがあります。
合併症を防ぐためには、手洗いやうがいなどの感染予防行動が大切です。また、細菌感染した場合、周囲に感染を広げないためにも咳エチケットなどの感染予防策が有効です。
脱水症状を防ぐ水分補給が重要
発熱や咳、鼻水などの症状により、RSウイルス感染症では体内の水分が失われやすくなります。脱水状態が続くと体調が悪化するリスクがあるため、十分な水分補給が必要です。また、以下の点に気をつける必要があります。
- 乳幼児には母乳やミルクを小まめに与える
- 水やスポーツドリンク、お茶などを適量摂取する
- 嘔吐や下痢など脱水症状になる可能性があるなら早めに受診する
発熱時には水分が失われやすいため、こまめな水分補給を心がけましょう。また、咳き込んで嘔吐している場合、体の調子を整える電解質という物質も失われているため、OS-1などの経口補水薬を飲ませるのも効果的です。
加湿や湿度調節を行う
加湿や湿度調整を行うことで気道粘膜への刺激を抑えられます。気道粘膜が刺激されると咳や痰が悪化する可能性があるため、注意が必要です。
家庭での対策として、以下の内容が挙げられます。
- 加湿器の使用
- シャワー・入浴
- 小まめな水分摂取
- 大声を出したり、長時間泣いたりさせない(乳児や小さいお子さんの場合)
加湿や湿度管理など治療と並行してご家庭でもできる対策といえます。
重症化のサインを見落とさない
自宅療養中に以下の症状があれば、重症化の恐れがあるため、早めに受診することをオススメします。
重症化のサイン | |
咳が次第に悪化する | 初期は軽い咳が出るが、次第に咳が強くなり止まらなくなる |
喘鳴を伴う呼吸困難 | 「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音が出る呼吸困難 |
呼吸数が増える | 呼吸困難のため、通常より呼吸数が増加する |
水分摂取ができない | 母乳や水分が取れない状態が続いている |
特に以下に該当するとRSウイルス感染症のハイリスク群であるため、注意が必要です。
ハイリスク群 | |
生後6か月未満の乳児 | 免疫が未熟なため、重症化しやすい |
早産児や低出生体重児 | 呼吸器系が未熟なため、合併症のリスクが高い |
先天性心疾患や慢性肺疾患を持つ児 | 基礎疾患があるため、呼吸不全に陥りやすい |
免疫不全症の児 | 免疫機能が低下しているため、重症化しやすい |
RSウィルス感染症の治療法に関する質問
- 質問①:RSウイルス感染症の治療法として使用される薬は何ですか?
- 質問②:RSウイルス感染症の治療法で家庭でできるケアは何ですか?
- 質問③:RSウイルス感染症の治療法で重症化を防ぐための方法はありますか?
質問①:RSウイルス感染症の治療法として使用される薬は何ですか?
RSウイルス感染症には特効薬が存在しないため、治療は対症療法が中心となります。
例えば、薬剤を用いるなら、発熱や呼吸器症状を和らげるために去痰剤や気管支拡張剤が使用されます。細菌感染の合併が疑われる場合には、抗生物質が処方されることもあります。
質問②:RSウイルス感染症の治療法で家庭でできるケアは何ですか?
家庭でできるRSウイルス感染症のケアには、以下の方法があります。
- 小まめな水分補給で脱水予防
- 鼻水の吸引で鼻づまりを解消
- 湿度調整にて安楽な呼吸を確保
- 手洗い・うがいなどの感染拡大予防
- 人混みや集団行動の回避
これらのケアを通じて、症状の緩和と感染拡大予防ができます。
質問③:RSウイルス感染症の治療法で重症化を防ぐための方法はありますか?
RSウイルス感染症の重症化を防ぐためには、事前の予防接種が有効です。
特に乳幼児や基礎疾患を持つ方は、流行時期になる前に予防接種を行うことが重症化の回避につながると考えられます。
RSウイルス感染症のワクチンであるシナジスはRSウイルスに対する特異的抗体で、RSウイルスが体内で増殖することを防ぐことにより、RSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症を抑制します。
予防接種以外の対策としては、早期の診断と適切な対症療法が重要です。
まとめ:RSウイルス感染症の治療は対症療法が中心、予防が何より大切
RSウイルス感染症に対する特効薬はありません。そのため、対症療法と合併症や重症化予防が治療の基本となります。
症状の悪化に注意しながら、小まめな水分摂取で脱水予防をしたり、加湿することで症状を和らげたりできます。呼吸が苦しそうや咳がひどくなっているなどあれば、重要化する前に受診することも選択肢の一つです。