
「お酒を飲まないから、肝臓は大丈夫」...その常識、もう古いです。
こんにちは、ヨシキです!毎年、会社や自治体から健康診断の結果が届く季節。皆さんは、その結果とちゃんと向き合っていますか?
「えーっと、体重は...去年よりちょっと増えたな。血圧はまあまあ。よし、γ-GTPは低いから、肝臓は今年もクリアだ!」
...なんて、お酒を飲む人向けの指標であるγ-GTPだけ見て、安心して結果表を閉じてしまっていませんか?実は、40代前半で体重が90kgを超えていた頃の僕が、まさにそれでした。「お酒は付き合い程度だし、肝臓は大丈夫」と、自分に都合のいいデータだけを見て、他の大切な警告サインを見事にスルーしていたんです。
実は今、僕のようなお酒をほとんど飲まない人にこそ、脂肪が肝臓にパンパンに溜まってしまう「MASLD(マスルド)」という病気が急増しているんです。これは、肥満や食べ過ぎ、運動不足が引き起こす、まさに現代の生活習慣病。何が怖いって、自覚症状が全くないこと。だから「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、SOSを発することなくじわじわと蝕まれ、気づいた時には肝硬変や肝臓がんへと進行している...なんてことも珍しくないんです。
この記事では、僕自身の反省も込めて、健康診断の数値をどう読み解けばいいのか、そしてあなたの肝臓が静かに発している「沈黙の警告」に、どう耳を傾ければいいのかを、できるだけ分かりやすく、僕の体験談も交えながらお話ししていきたいと思います。
まずは結果表と向き合おう!肝機能で本当に注目すべき「3つの数値」

さて、お手元に健康診断の結果表はありますか?肝機能の欄を見てみましょう。「γ-GTP」以外にも、「AST(GOT)」とか「ALT(GPT)」といった項目がありますよね。僕も昔は「何かの暗号か?」と思っていましたが、この3つの数値をセットで見ることが、肝臓からのメッセージを正しく受け取るための鍵なんです。
① AST (GOT) :全身の細胞のダメージを示す警報
まず「AST」。これは、肝臓だけでなく、心臓の筋肉や手足の筋肉、赤血球の中にも含まれている酵素です。だから、この数値が高いということは、体のどこかの細胞がダメージを受けているぞ、という広範囲な「警報」のようなもの。激しい運動をした後なんかにも、一時的に上がることがあります。まあ、体からの「ちょっと疲れてるよー」というサインくらいに捉えておきましょう。
② ALT (GPT) :【最重要】肝臓専門のダメージを示す警告灯
次に、今日の話で一番覚えてほしいのが、この「ALT」です。この酵素は、そのほとんどが肝臓の細胞の中にしか存在しません。ということは、どういうことか?
血液中のALTの数値が高いということは、**今まさに、あなたの肝臓の細胞が、リアルタイムで壊れている**ということを示す、非常に直接的で重要な「警告灯」なんです!
僕もそうだったんですが、肥満や脂肪肝があると、このALTの数値が敏感に上昇します。そして、専門家の間では「ALTの数値がASTの数値よりも高い(ALT > AST)場合」は、アルコールが原因ではなく、脂肪肝の可能性が非常に高いと考えられています。お酒を飲まないのにALTだけが高い...それは、あなたの肝臓が脂肪で悲鳴を上げている、紛れもないサインなのです。
③ γ-GTP :アルコールや薬剤による肝臓の負担を示すサイン
そして、おなじみの「γ-GTP」。これは、アルコール性肝障害の指標としてあまりにも有名ですね。お酒を飲む習慣がある方は、まずこの数値を気にすると思います。ただ、この数値はアルコールだけでなく、脂肪肝や、飲んでいるお薬の影響、胆石などで胆管が詰まった時などでも上昇します。肝臓が「ちょっと負担かかってるよー」と教えてくれるサインの一つ、という位置づけです。
「ALTが高いけど、お酒は飲まない」...その正体はMASLD(マスルド)かもしれません

さて、ここからが本題です。「ASTは正常なのに、ALTだけちょっと高い」「お酒はほとんど飲まないのに、毎年肝機能で引っかかる」。健康診断で最も見過ごされがちで、しかし最も危険なこのサインの正体について、詳しく見ていきましょう。
MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)とは?
この長くて難しい名前、MASLD(マスルド)。これが、お酒を飲まない人の脂肪肝の、新しい世界共通の呼び名です。
簡単に言うと、肥満や糖尿病、脂質異常症といった、いわゆる**メタボリックシンドローム(代謝機能障害)が原因で、肝臓に脂肪がフォアグラのように蓄積してしまう病気**の総称です。なんと、日本の成人のおよそ3〜4人に1人が、このMASLDか、その予備軍だと言われています。もはや国民病ですよね。
ちなみに、2023年までは「NAFLD(ナッフルディー)」と呼ばれていました。「非アルコール性」という意味です。でも、この「非アルコール」という言葉が、「お酒を飲まないなら大丈夫」という危険な誤解を広めてしまったため、「原因はメタボですよ!」ということを明確にするために、世界的に名称が変更されたんです。
怖いのは「ただの脂肪肝」で終わらないこと
「でも、脂肪肝って、太ってる人ならみんなそうでしょ?大したことないんじゃないの?」...40代前半の僕も、正直そう思っていました。しかし、これが大きな間違いでした。
MASLDと診断された人の一部は、肝臓にたまった脂肪が原因で「炎症」が起きたり、肝臓が硬くなる「線維化」が進んだりする、より悪性の「MASH(マッシュ)」(旧NASH)という状態に進行します。
このMASHが本当に怖い。MASHを放置すると、数年から数十年という長い時間をかけて、肝臓がカチカチに硬くなって正常に機能しなくなる**「肝硬変」**や、命を脅かす**「肝臓がん」**へと、高い確率で進行してしまうのです。しかも、その間、ほとんど自覚症状がない。これが「沈黙の臓器」の最も恐ろしいところです。痛みもかゆみもないまま、体の中では静かに、そして着実に、取り返しのつかない病状へと進んでいく可能性があるのです。
【今日からできる】沈黙の臓器を救う!脂肪肝を改善する2大アプローチ
ここまで読んで、「自分のことかも...」とドキッとした方もいるかもしれません。でも、大丈夫。まだ間に合います。脂肪肝の素晴らしいところは、生活習慣を改善すれば、ちゃんと元に戻る可能性があるということです。僕自身、90kgあった体重を70kg台まで落としたことで、肝機能の数値も劇的に改善しました。特別なことは必要ありません。必要なのは、今の体重から「ほんの少しの減量」を目指すことです。
アプローチ①:食事療法「何を減らし、何を増やすか」
僕もそうでしたが、運動習慣がない人がいきなり走り始めるのはハードルが高い。だから、まずは食事から見直しましょう。
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まず減らすべきもの:
なんと言っても「糖質」、特に「果糖」です。甘い缶コーヒーやジュース、お菓子、そして意外なことに果物の食べ過ぎ。これらに含まれる果糖は、体内で中性脂肪に変換されやすく、肝臓にダイレクトに蓄積されます。僕も昔は、仕事中に甘いカフェラテを何杯も飲んでいました。まずは、それをブラックコーヒーに変えるだけでも大きな一歩です。もちろん、揚げ物や脂身の多いお肉、ポテトチップスのような脂っこいものも、少しずつ減らしていきましょう。 -
積極的に増やすべきもの:
食物繊維が豊富な野菜、きのこ、海藻類。これらは血糖値の急上昇を抑え、脂質の吸収を穏やかにしてくれます。そして、肝臓の細胞が再生するための材料となる、良質なタンパク質も大切。鶏むね肉や魚、豆腐や納豆などの大豆製品**を意識して摂るようにしましょう。ちなみに、ブラックコーヒーや緑茶も、脂肪肝の改善に良いという研究報告があるんですよ。
アプローチ②:運動療法「きつい運動は不要、続けることが重要」
食事の見直しに慣れてきたら、次は運動です。僕はいきなりトレイルランニングという少しハードなものに挑戦しましたが、皆さんはそんな必要はありません。
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おすすめの運動:
まずは、少し早歩きのウォーキングから始めましょう。週に3回、1回30分。これだけで十分です。ポイントは、少し汗ばむくらいの強度で、おしゃべりができるくらいのペースを保つこと。こうした有酸素運動は、肝臓にたまった脂肪をエネルギーとして燃焼させるのに、最も効果的です。 -
プラスαの筋トレ:
もし余裕があれば、スクワットなど、下半身の大きな筋肉を鍛える筋トレを週に2回ほど加えると、さらに効果が上がります。筋肉量が増えると基礎代謝が上がり、脂肪が燃えやすい「痩せ体質」に変わっていきますからね。
自力での改善が難しい方へ。未来の治療法「治験」という選択肢
食事や運動を頑張っても、なかなか数値が改善しない。あるいは、すでにMASHへと進行してしまっている...。そんな方もいらっしゃるかもしれません。でも、諦めないでください。そんな方々のために今、世界中で新しい治療法の開発が、猛スピードで進められています。
なぜ、脂肪肝(MASLD/MASH)の「治験」が活発なのか?
実は、これだけ患者さんが多いにもかかわらず、今のところ、世界中どこを探しても、このMASLD/MASHに対して国から正式に承認された「特効薬」は、まだ一つも存在しないのです。
だからこそ、世界中の製薬会社が、この病気に効く初めての薬を作ろうと、しのぎを削って開発競争をしています。その結果、非常に多くの、そして大規模な国際共同治験が、日本を含めた世界各国で、現在進行形でたくさん行われています。僕が運営している会社でも、まさに今、このMASLDの試験に関する依頼が急増しています。
治験に参加するということ
「治験」と聞くと、少し怖いイメージがあるかもしれません。しかし、治験は、開発中の新しいお薬の有効性や安全性を、国の厳しいルールのもとで確認していく、とても大切なプロセスです。専門の医療チームによる、通常よりも手厚いサポートを受けながら、未来の標準治療となるかもしれない最新のお薬を、いち早く試すことができる可能性があります。
もちろん、まだ確立されていない治療法ですから、期待した効果が出ない可能性
承知いたしました。
前の文章の続きから、自然な流れで記事の最後までを書き上げます。
(続き)
もちろん、まだ確立されていない治療法ですから、期待した効果が出ない可能性や、未知の副作用のリスクもゼロではありません。しかし、既存の治療法である生活習慣の改善だけでは限界を感じている方にとっては、この「治験」という選択肢が、未来を切り拓く新しい希望の扉となり得るのです。
まとめ:健康診断は、あなたの肝臓からの「年に一度の手紙」

健康診断の結果表に並んだ、無機質な肝機能の数値。それは、文句一つ言わずに、毎日あなたの体のために働き続けてくれている肝臓から届いた、「年に一度の、大切な手紙」だと、僕は思うんです。
そこに書かれた「ALTが少し高いですよ」という一文は、「ご主人様、最近ちょっと働きすぎて、脂肪という荷物が重くて疲れちゃったよ。少しだけ、私のことを気にかけてくれませんか?」という、沈黙の臓器からの、精一杯のSOSサインなのです。
僕自身、40代前半までその手紙を無視し続けてきました。でも、45歳を過ぎてようやくその声に耳を傾け、食生活を変え、運動を始めたことで、体は正直に応えてくれました。肝臓は、ちゃんと労ってあげれば、その再生能力を発揮して、必ず元気を取り戻してくれます。
まずは、あなた自身の健康診断の結果と、もう一度真剣に向き合ってみてください。そして、その手紙の内容が、もし少し深刻なものであったとしても、未来には「治験」という新しい希望の光があることも、ぜひ心の片隅に留めておいていただければ嬉しいです。
すべては、あなたの肝臓からの「沈黙の警告」に気づくことから始まります。
MASLD(脂肪肝)をはじめ、現在どのような治験が募集されているのか、最新の情報にご興味をお持ちの方は、ぜひ以下のリンクからお住まいの地域や気になる疾患で検索してみてください。